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規制庁職員トンデモ発言「原発と一般施設は同じ」 川内原発設置変更許可処分取消訴訟 

脱原発弁護団全国連絡会|2024年8月12日4:05PM


 火山活動による事故リスクが世界一高い九州電力川内原子力発電所について、火山問題のみを争点としている「川内原発設置変更許可処分取消訴訟」の第6回口頭弁論期日が7月5日、福岡高裁(松田典浩裁判長)であり、トンデモ発言が飛び出した。

期日後の報告集会。福岡県弁護士会館にて。(撮影/脱原発弁護団全国連絡会)

 現在の火山学の水準において、噴火の中長期的予測ができないこと、噴火の時期及び規模について、相当前の時点(核燃料を冷却したうえで搬出するために必要なリードタイムを確保できる時点)で、相応の精度で把握することは困難である。

 だが、新規制基準の火山ガイドでモニタリングは、破局的噴火の前兆現象を把握して、原子炉を停止し、核燃料を搬出することを目的として位置づけられていた。その前提には、モニタリングで噴火の前兆現象を適切に把握できるとの「誤解」があった。

 この期日で、火山ガイドの検討・作成に関わった安池由幸氏と火山ガイドの検討を統括する立場にあった櫻田道夫氏の証人尋問が一日かけて行なわれた。3・11福島第一原発事故以降、原子力規制庁の職員の証人尋問は初めてである。

 安池氏に対する控訴人側の尋問では、火山ガイド施行後の2014年9月2日に開催された第2回会合議事録の安池氏の下記の発言が取り上げられた。「現状のガイドの考え方とか、今の審査の流れの中では、やはり巨大噴火だから大きな予兆があるとか、大きな変動があるとかということを、当初は考えていたんですけども、やはりそれ(予兆)は、必ずしも起こるとは限らないと」

 安池氏が、「当初」とは、ガイドを作る過程でのヒアリングまでだと証言した。これに対し、海渡雄一弁護士が、この発言からは予兆がある前提で火山ガイドを考えていたとしか読めない、あなたの証言は虚偽ではないか、「当初」がヒアリングまでと言うなら根拠を説明してくださいと迫り、安池氏は答えられなかった。その後、安池氏の証言の態度が変わり、「個人的認識を述べていいのですか」との発言も交え、それまでの、入念に準備していたシナリオ通りではないと思われる証言が端々に出た。

 期日後の報告集会で、中野宏典弁護士は、「他の専門家の人たちからヒアリングした段階で、確かに、安池氏自身は、モニタリングが難しいことを分かっていたのかもしれない。しかし、『現状のガイドの考え方とか、今の審査の流れの中』で兆候が把握できると思っていた、と言っているのだから、要するに、『自分は誤解していなかったが、規制委員会が誤解した』ということを暗に言っているに等しい。ある意味では素直に、そのことを証言したように思います」と分析した。

 甫守一樹弁護士は、「尋問に当たっては、何年も前から決まってるし、多分かなり練習してきたはずなんだけど、海渡先生が虚偽ではないかと指摘したあたりから、貧乏ゆすりの動きが激しくなって、ちょっとイラッとしてるなあと思ったけど、それが、本当のこと言っちゃうぞという方向に行って、国の指定代理人の方に背を向けて、規制委員会、規制庁は予知できると思ってたかもしれないけど俺は違いますとの趣旨をハッキリ述べたところが面白かった。

 櫻田氏は『全体をみている立場だから、火山学的なことはわかりません』と言いながら、『根拠はないけど、10年前に巨大噴火の予兆がわかる』と言ってましたね。(原発稼働の是非の判断は)櫻田氏の匙加減という話になってしまっている。要するに原発止めたくないってことですよね。『立地不適』と言っちゃうと、六ヶ所再処理工場だって、泊原発だって、下手すりゃ伊方原発だって(不適)という話になる。どんなに科学者に(危険性を)指摘されても、耳を防いでいる。このような櫻田氏の態度から、原子力規制委員会は科学的な審査を行なっておらず、科学風な政策的な判断をしているだけなのだということが明らかになった」と述べた。

 巨大噴火リスクについて、一般の防災と原発の規制を同列に考えているのかとの中野弁護士の質問に、櫻田氏が「同列に考えていけないという考えが私にはわかりません」と証言した。報告集会で中野弁護士は、「まさか、破局的噴火のリスクは一般防災と同じであると答えるとは思わなかった。そういう人たちが規制を行なっているのは恐ろしいこと。福島第一原発事故は人災と言われるが、こういう考えを持った人たちが事故を起こしたんだと強い憤りを感じた」と指摘した。

 共同代表の海渡雄一弁護士は、「裁判所も今日は非常に熱心に聴いていたと思いますし、十分勝利の展望はつかめたんじゃないかなと思う。次回口頭弁論期日は12月18日14時で結審。証人尋問を踏まえた最終準備書面についてプレゼンを行う予定なので、多くの人に傍聴に来てほしい」と呼びかけた。

(『週刊金曜日』2024年7月26日号)

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