「Colabo」vs.「暇空茜」の名誉毀損訴訟は暇空氏に220万円の賠償命令 東京地裁
平畑玄洋・編集部|2024年8月16日1:58PM
一般社団法人Colaboと代表の仁藤夢乃氏が、暇空茜こと水原清晃氏に対し、ブログサイトへの投稿で名誉を傷つけられたとして計1100万円の損害賠償などを求めた民事訴訟(本誌2月2日号など既報)で東京地裁(西村康一郎裁判長)は7月18日、水原氏に220万円の賠償と投稿の削除を命じる判決を言い渡した。水原氏側は控訴する考え。Colabo側も「(水原氏により)流されたデマの損害は220万円では到底カバーできない」として被害の大きさを控訴審で主張していく構えだ。
水原氏は2022年9月9日、ブログサイト「note」で「Colaboと仁藤夢乃さんの生活保護ビジネスについて調べてみました」と題して投稿。「10代の女の子をタコ部屋に住まわせて生活保護を受給させ、毎月一人65000円ずつ徴収している」などと書いた。訴訟ではこの記述をめぐり、真実性や真実相当性が争われ、被告は「公益目的」だったとも主張した。
判決では水原氏の記述について「いずれも真実であるとは認められない」と断定。「自らの好む漫画やアニメなどのコンテンツを批判する原告仁藤に対し強い敵意を抱いた」と、仁藤氏を批判した動機にも言及した。「活動報告書等の記載をあえて曲解している可能性を否定できない」「事実確認等を一切行っていない」などと指摘し、水原氏には真実と信じた相当な理由もないと断じた。
仁藤氏は3年ほど前、各地の温泉のイメージを擬人化したキャラクター「温泉むすめ」について「性差別で性搾取」と批判。これに対し水原氏はX(旧ツイッター)上で「仁藤夢乃さんを調べてるのも温泉むすめ燃やしてたからですよ。俺は作品を燃やす奴を燃やします」「作品を燃やすやつの痛い腹を探るのが趣味」などと投稿し、敵対姿勢を示した経緯がある。
判決はさらに、水原氏が投稿したブログの内容について「原告らが支援対象の女性を利用して私益を図っているという印象を生じさせる」と判断。「(Colabo側に)相当な社会的評価の低下があった」と名誉毀損を認めた。また、水原氏がブログに投稿して以降、閲覧者らによってColaboの活動が妨害されて事業に支障が生じる一方、水原氏は訴状を有料で公開するなど自らの利益のために訴訟を利用し、それを公言していると指摘。Colaboには経済的な損失が生じ、仁藤氏は多大な精神的苦痛を被ったと認定した。水原氏はこの訴訟のために多額のカンパを集め、裁判所の認定でも、その寄付額が約1億5000万円に上ることが明らかになっている。
賠償額には不満の声も
判決後に開かれた原告側弁護団の報告集会で、弁護士の神原元氏は「全面勝訴だ」と喜び「水原氏が流した情報が完全なデマだということが明らかになった」と判決を評価した。仁藤氏も「ほっとしている。事実と違う書き込みで深く傷ついた少女たちにも安心してもらえたら」と語った。
だが、損害賠償額については不満を滲ませる声が相次いだ。仁藤氏は「この2年間受けてきた被害とは釣り合わない」。Colabo理事の齋藤百合子氏は「デマを垂れ流して金儲けをした人が『220万円で済むのね』と思ったとしたらまったく歯止めにならない」と嘆いた。弁護士の太田啓子氏も「SNSの拡散の量と破壊力、それがもたらした実害にまで踏み込んでもらえなかった」と、司法判断の課題を指摘した。
仁藤氏はさらに「女性や女性支援を攻撃するとお金が集まるんだと学んだ別の加害者が無数に出てきた」と、被害の広がりに懸念を示した。「ひまそらあかね」の名で水原氏が立候補して11万票を獲得した東京都知事選にも言及。「女性支援に対する攻撃がお金や票になるという社会を変え、デマの拡散や誹謗中傷を許さない第一歩の判決」と総括した。
水原氏は18日、Xに「今回の判決は残念です。控訴でぜひ逆転できればと思います」と投稿。一度も出廷しなかったが、裁判を続けられたことについて「皆さんのカンパのおかげです」と書き込んだ。
(『週刊金曜日』2024年8月2日号)