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「早稲田大学は軍事企業、原発関連企業との連携協定を破棄せよ!」教員らが署名活動

守中高明・早稲田大学教員|2024年9月13日8:05PM

 あってはならない事態が今、早稲田大学で起きている。「カーボンニュートラル」をスローガンとして、大学側が三つの軍事企業・原発関連企業との間で包括連携基本協定を結びつつ、この3社が代表する経済産業界に知的・人的資源を供給すべく、全学的研究組織を編成し、教育制度を運営する――これは、総動員と呼ぶほかない体制だ。

7月27日のキックオフ集会。左から堀真悟、石田智恵、マニュエル・ヤン、堀千晶、守中高明の各氏。(提供/教員学生有志の会)

 徴候がはっきり感じ取れたのは2023年11月8日、早稲田大学が三菱電機を相手に「サステナビリティ社会の実現に向けた包括連携に関する基本協定」を締結した時である。早稲田大学はすでに22年12月13日、東京電力ホールディングスとのあいだに基本協定を結んでいた。東京電力と三菱電機――「3・11」東京電力福島第一原子力発電所の過酷事故を記憶し、「原子力緊急事態宣言」が今なお解除されていないことを知る者にとって、この二つの企業の名の並置は、危険なシグナルだった。年が明けて24年3月14日には、清水建設との間でも同じ基本協定が締結された。事の本質は明らかとなった。

 三菱電機‐清水建設‐東電ホールディングス――なぜこの3社なのか。それは、この3社が、現政権が遂行する日本の軍事国家化と原子力発電再拡大化を中心的に担うことによって利益の最大化を目指す企業であるから、そしてその企業と知的・人的資源を共有する巨大な経済回路の中で、早稲田大学が「成長」を確実にすることを企図しているからだ。

美名下で糊塗されるもの

 この構図を作り出したのは、22年12月16日に閣議決定された「安保関連三文書」改定であり、その直接的効果たる「防衛産業」における「特需」(『日本経済新聞』24年5月27日)である。ここで強く注意すべきなのは、現代における軍事技術と核エネルギー技術が、同じ一つの本質の二つの現れであることだ。事実、三菱電機は警戒管制レーダーシステムや次世代戦闘機搭載用「ミッションアビオニクスシステム」と「原子力プラント用電機品」の開発生産を並行して進め、清水建設は沖縄米軍基地や日本全土の自衛隊基地と日本の全原発の建設を同時に担ってきた。

「カーボンニュートラル」にも注意すべきだ。本来、地球環境破壊の防止・気候危機の解決を目的とするこの理念は、三つの企業において、新型兵器の開発生産・自衛隊基地の強靭化、および原発再稼働・新増設を推進するための口実として使われている。早稲田大学においてもまた、研究組織「カーボンニュートラル社会研究教育センター」(22年12月1日設置)、教育制度「カーボンニュートラル副専攻」(学部生対象・22年度開始)「大学院カーボンニュートラル副専攻」(大学院横断型・24年度開始)を正当化するために用いられている。これらはすべて、現実を糊塗する「ホワイトウォッシュ」である。

「早稲田大学が軍事企業・原子力発電関連企業と締結している基本協定を破棄するよう求める教員学生有志の会」は、この事態を広く日本社会に知らしめるために発足した。石田智恵(文化人類学)、岡真理(現代アラブ文学)、堀真悟(キリスト教社会学)、堀千晶(フランス現代哲学)、マニュエル・ヤン(歴史社会学)、そして筆者の6人――専攻も年齢もジェンダーも異にする私たちは、しかし「学問の独立」を「建学の本旨」とする早稲田大学にその自律性を回復させ、軍産複合体への加担を停止させるために結び合った。

 同会が7月12日に開始した署名活動は、全国の市民・学生・研究者(憲法学、植民地主義研究、フェミニズム研究、経済史研究、教育学、現代哲学、等々)から多数の賛同を得ており、キックオフ集会「誰のために学ぶのか――総動員体制に抗う、私たち―の―今」(7月27日・早稲田奉仕園)は、問いを分かち合い、研ぎ澄ます場となった。

 この声を、近く私たちは届ける――応答すべき責任主体のもとに。

(『週刊金曜日』2024年8月30日号)

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