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〈難民・移民の人たちの声を聞いて書いた超入門書〉雨宮処凛

雨宮処凛・『週刊金曜日』編集委員|2024年9月13日8:55PM

雨宮処凛・『週刊金曜日』編集委員。

 住民票が作れない。保険証もない。病院に行くと全額自己負担になるから体調が悪くてもなかなか病院に行けない。銀行口座も作れないし、そもそも身分を証明するものがない。県外に移動するにもいちいち許可を取らないといけない――。

 こんな状況に置かれている人たちがこの国にはいる。仮放免の外国人たちだ。仮放免とは、簡単に言うと合法的な在留資格がない状態(入管施設への収容を一時的に解かれている)。上記のような制約だけではなく働くことも禁じられているのでお金を稼ぐ手段がない。にもかかわらず、日本の福祉の対象外。それは大人だけでなく、子どもにもたくさんいる。

 今年5月には、15歳のクルド人の少女がインフルエンザで1日入院したところ、約24万円を請求された事例が注目された。保険があれば約5万円で済んだそうだが、働けないのに医療費は全額自己負担となると、そう簡単に病院には行けないだろう。

 そんな仮放免の外国人、コロナ禍では困窮を極めた。コロナ前は同国人コミュニティの支え合いがあったのが、コロナによって支える側も仕事を失うなど「助け合い」が機能しなくなったのだ。よって支援団体にはSOSが殺到。「反貧困ネットワーク」「北関東医療相談会」「移住者と連帯する全国ネットワーク」の3団体は2020年4月から22年9月まで、外国人のべ1万人に1億7324万円を給付している。

 私自身もコロナ禍では、多くの外国人の相談に耳を傾けてきた。その多くが日本で難民申請中の人々。背景には、独裁政権や民主化活動をする人々への弾圧など、教科書や本でしか読んだことがないような事件や政治情勢があった。

 そんな出会いを通して、8月末、『難民・移民のわたしたち これからの「共生」ガイド』(河出書房新社)を出版した。彼ら彼女らが何に困り、子どもたちは何を望み、そして私たちはどうやって共生していくかを詰め込んだ超入門書だ。

 仮放免のまま卒業したら、行ったこともない「母国」に強制送還されるかもしれないと怯える大学生や、サッカー選手になりたくても県外の試合に出られず夢を諦めた若者の声なども盛り込んだ。6月には改悪された入管法も施行され、また最近はクルド人への見るに耐えないヘイトもネット上で広まっている。ぜひ手にとってみてほしい。

(『週刊金曜日』2024年9月6日号)

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