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美浜仮処分、即時抗告審第1回審尋期日 「原決定は救命ボートのない船の出航認めたのと同じ」

脱原発弁護団全国連絡会|2024年9月13日7:17PM

 美浜原発3号機運転差止仮処分の即時抗告審第1回審尋期日が8月2日、名古屋高裁金沢支部で開かれた。今年3月29日の却下決定に対して不服申立てをした即時抗告審。審尋期日は非公開だが、終了後に記者会見を兼ね報告集会があった。

8月2日、裁判所に入廷行進をする弁護団ら。(写真/脱原発弁護団全国連絡会)

 弁護団共同代表の井戸謙一弁護士は、「今日の審尋において、住民側は①福島第一原発事故がいかに深刻で危機的であったかを改めて認識してもらい、②能登半島地震の教訓から地震と原発事故の複合災害の場合は避難できず、被ばくを強いられるがままの状態に置かれてしまう。避難ができない状態で、運転は許されてはならない。③司法審査のあり方として、裁判所の判断の対象、立証責任の所在、従来の裁判例を整理した上で原決定が間違っていることを30分かけてプレゼンした」と述べた。

 大河陽子弁護士より、①②について、「原発の制御の難しさ、福島第一原発事故の被害が今も続いていること、地震大国の日本で、今年元日の能登半島地震で家屋がつぶれ孤立した場合に避難できないことについて、具体的に示した。審理に当たって、原発がどういう施設か押さえてもらいたかった。一審の決定は、国が崩壊しかねない危険である原発の特殊性を考慮せず、普通の工場程度の安全性として考えている」と説明した。

 抗告人の宮下正一さんは、一審や広島高裁松江支部(島根原発2号機運転差止仮処分)の判断は、避難を考えなくてよいとしたが、過酷事故が起きる可能性があるから規制基準が見直されたはずなのに、それはどこにいってしまったのか、と指摘した。

 これに対して大河弁護士は、「それらの決定は、住民側は第4層までで立証できていないから第5層(避難)は考えなくてよいという判断だが、間違っている。なぜなら、避難計画は原発事故から住民を守る最後の砦であり、これを欠けば、身体・生命は守れない。事故前に戻ってしまっている司法の判断に対して、そもそも原子力災害指針の定められた経緯も主張する等、住民の身体・生命を守るという点に欠けていないかという視点から主張を提出している」と説明した。

 この点について、井戸弁護士は、「船には救命ボートを積むことが法律上義務付けられていて、船本体の安全性がいくら高くても救命ボートを積んでいない船は出航できない。一審の判断をたとえて言うと、救命ボートを積まないで出航しようとしている船に対し、出航禁止の仮処分を申し立てたら、運航会社は、この船は海難事故を起こさないから、救命ボートを積む必要はない、却下せよと求めた。裁判所はこの船が今回の航行中に海難事故を起こすことを住民側に証明せよ、証明すれば申し立ては認めるけど、証明できていないじゃないか。つまり、救命ボートを積んでなくても、出航禁止の申し立ては認めないと言ってるのと同じ。いかに非常識な判断か、認識していただければと思う」と述べた。

 今後について井戸弁護士は、次回は11月1日13:30。弁護団としては、結論を急ぐという側面はあるが、裁判所に原発の問題を理解してもらうために期日を重ねたいと述べた。

(『週刊金曜日』2024年8月30日号)

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