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〈朝鮮人虐殺追悼文送付の動き広がる〉宇都宮健児

宇都宮健児・『週刊金曜日』編集委員|2024年10月17日5:57PM

宇都宮健児・『週刊金曜日』編集委員。

 東京都墨田区横網町公園内にある関東大震災朝鮮人犠牲者追悼碑前で9月1日行なわれた朝鮮人犠牲者追悼式典に、小池百合子都知事は今年も追悼文を送らなかった。

 追悼式典が始まった1974年当時の美濃部亮吉知事以来、歴代都知事はすべて追悼文を送ってきたのに、今年で小池知事は8年連続で追悼文を送らなかったことになる。小池知事は、都内の慰霊堂で行なわれる大法要ですべての震災犠牲者を慰霊していると弁明しているが、自然災害による犠牲者と虐殺という人災による犠牲者とでは犠牲者の性格がまったく異なるものである。

 東京都の首長である小池知事の追悼文不送付は、認めたくない過去を黙殺する虐殺否定論につながるとともに、外国人差別、排外主義を助長する行為であり、厳しく批判されねばならない。

 小池知事は関東大震災で虐殺された朝鮮人犠牲者の追悼式典に追悼文を送らなかったが、首都圏の自治体では、関東大震災朝鮮人犠牲者の追悼式典に自治体の首長が追悼文を送る動きが広がってきている。

 市民団体が千葉県船橋市で9月1日に開いた関東大震災で虐殺された朝鮮人犠牲者の追悼式典には、千葉県の熊谷俊人知事が初めて追悼文を送付している。

 また、9月4日にさいたま市で行なわれた関東大震災の朝鮮人虐殺事件でさいたま市内において犠牲になった姜大興さん(当時24歳)をしのぶ市民団体による追悼会には、埼玉県の大野元裕知事が初めて追悼文を送付している。この追悼会には、昨年に続いて清水勇人さいたま市長も追悼文を送っている。

 さらに、埼玉県本庄市と熊谷市、上里町では、関東大震災で犠牲となった朝鮮人を追悼する式典を長年続け、首長も出席しているということである。

 本庄市の吉田信解市長は、マスコミの取材を受けて「過ちをくり返さないために、何が起きたかをきちんと調べ、殺された人の無念に思いを寄せて追悼することは大事」と語っている。本庄市の吉田市長は、生家が市内の寺で、幼い頃から慰霊式に参列してきており、市長就任後も毎年出席し、追悼の言葉を送っているということである。

 歴史を直視しようとしない政府や小池知事は、本庄市の吉田市長の姿勢を学ぶべきである。

(『週刊金曜日』2024年9月20日号)

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