非正規職員の人事情報を多くの自治体「把握せず」 情報公開請求で明らかに
竪場勝司・ライター|2024年11月5日2:57PM
「なくそう!官製ワーキングプア東京集会実行委員会」が9月11日、東京都内で記者会見を開き、非正規公務員の雇用状況などに関する情報公開請求の結果やアンケート結果を発表。多くの自治体が非正規職員の人事関係情報を把握していない実態などが明らかになった。
実行委員会は「公務非正規女性全国ネットワーク」(通称:はむねっと)などの団体や個人で構成されている。情報公開請求は会計年度任用職員(地方公務員法の改正により2020年度から導入された非常勤職員の制度。任期が決まっており、通常は4月1日から翌年3月31日までの1年間)の離職実態を明らかにするために、首都圏の人口10万人以上の106自治体を対象に、実行委員会が今年度に入って実施した。
請求結果によると、常勤職員に比べ、会計年度任用職員は杜撰な取り扱いをされており、多くの自治体で会計年度任用職員に関する基本的な人事関係情報が把握されていなかった。
地方自治体で30人以上の離職者が発生する場合、首長は職業安定に関する機関に大量離職通知を提出することが法令で義務づけられている。情報公開請求結果によると、22年度末に大量離職通知を提出していた自治体は106自治体のうち50自治体だけだった。この50自治体の中でも「離職者の内訳」については「不存在」と答えた自治体が23、「一部公開」と答えた自治体が7と、全体の6割が離職者の内訳についてきちんと把握していない実態が浮かび上がった。
また、会計年度任用職員制度の公募、選考、採用などは多くの自治体では各課任せになっており、人事担当の部局が集約していないため、法律や省令で作成・保存すべきとされている情報について、「作成していないため不存在」と回答する自治体が多かった。
「使い捨て」との批判
会見では「はむねっと」が今年6月から7月にかけて、非正規で国の機関や地方自治体で働く人やかつて働いていた人を対象にインターネットを通じて行なったアンケート結果の発表もあった。同会では同様の調査を21年から毎年実施している。
今年の調査には685人から回答があり、そのうち9割を女性が占めた。就業形態ではパートタイム会計年度任用職員が全体の74%。就労収入に関しては年収250万円未満の人が65%となった。週当たりの労働時間については、全体の6割が30時間以上だった。勤続年数に関しては、現在の職場に11年以上勤務している人が17%、6年以上の人が35%あった。4年間の調査の推移をみても同じ職場に11年以上勤務している人が毎年2割近くおり、6年以上の人も毎年4割近い数字となっている。
また、アンケート結果によると、退職者のうち4割が「仕事を続けたかったが、雇い止めになった」と回答し、この数字は昨年と同様だった。「問題だと感じること」として、回答者の6割が「雇用が不安定な有期雇用であること」を挙げ、続いて「低収入」や「正規登用の道がない」ことを挙げる人が上位を占めた。
就業形態に関わる呼称については「会計年度さん」など「名前以外で呼ばれたことがある」と回答した人が30%あった。
これに関して「はむねっと」共同代表の瀬山紀子さんは「会計年度任用職員制度がスタートして5年目になったが、単年度で雇い止めされることが職名に記されているという意味で、働く人の権利侵害と言えるような呼称が、この間定着してしまっている。自由記述でも、不安定雇用に多くの問題を指摘する回答が多く、『不快である』とか『人として扱われていないように感じる』『使い捨て』といった回答が寄せられた」と話し、制度の現状を批判した。
説明の最後に瀬山さんは「数年ごとの公募、恣意的な雇い止めを可能とする公務における有期雇用制度を、根本から変えていくこと、無期雇用を前提とするような法整備を早急にするよう、引き続き声を上げていきたい」と訴えた。
(『週刊金曜日』2024年9月27日号)