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CEDAW8年ぶり日本審査 性的少数者への差別禁止、夫婦別姓など市民団体が課題提起
古川晶子・ライター|2024年11月5日3:09PM
10月17日、スイス・ジュネーブで、国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)による日本審査が行なわれる。CEDAWは、女性に対するあらゆる差別を禁じた女性差別撤廃条約の履行状況を監視する国連の専門組織で、日本の審査は2016年以来8年ぶり。差別をなくす措置の進捗状況について政府がレポートを提出するが、市民団体や個人もレポートを提出することができる。委員会はそれらの情報をもとに審査する形だ。
9月24日にはレポートを提出した市民団体の代表らが厚生労働省で記者会見した。会見したのは、世界の妊産婦・女性の命と健康を守るために活動する公益財団法人ジョイセフや、刑法・堕胎罪の撤廃と子どもを産むか産まないかを自分で選べる社会を目指す「SOSHIREN・女のからだから」、選択的夫婦別姓制度とジェンダー平等を求める一般社団法人「あすには」など8団体。
法律婚をするならどちらかが姓を変えなければいけない現行制度については、過去3回の勧告で夫婦同姓の強制は差別的であるとして改善を求められている。しかし日本政府はいまだに選択的夫婦別姓制度を実現していない。
法律上の文言では、どちらの姓を選択してもよいことにはなっているが、女性が姓を変える例が9割以上で慣習化されている現実がある。女性の負担が重く、22年の内閣府男女共同参画白書で20~39歳の独身女性の25・6%が「結婚したくない理由」に姓が変わることを挙げている。
政府は法改正が進まない理由として選択的夫婦別姓への国民の理解不足を挙げているが、各種世論調査を見ても別姓導入賛成のほうが多くなっており、「理解不足」とは言いがたい。あすには代表の井田奈穂さんは「自民党総裁選や首相答弁でも、国内世論が分かれているとして導入に至らない。強い勧告が出てくれることを期待している」と話した。
「政治を変える好機」
前出のジョイセフやSOSHIRENのほか、NPO法人ピルコン、#なんでないのプロジェクト、公益社団法人Marriage For All Japan – 結婚の自由をすべての人に、LGBT法連合会、Transgender Network Japan(Tネット)の7団体は、性と生殖に関する健康と権利(SRHR)課題を中心に連携して「SRHR市民社会レポート」を作成。以下の6課題を提起した。
1優生保護法に基づく強制不妊手術の被害者の救済
2包括的性教育の公教育への導入
3堕胎罪撤廃・母体保護法改正
4安全な中絶、緊急避妊薬を含む避妊法へのアクセス
5性的指向及び性自認に基づく差別禁止法の制定、トランスジェンダーの人々のSRHRをめぐる諸課題、多様なジェンダーの人々が直面する差別
6婚姻の不平等(同性間の婚姻の法制化)
SRHRは自分の身体に関することを自分自身で決めることができることを指し、そのための適切な知識やヘルスケアなどが十分に提供されることを求めるものだ。 ジョイセフ代表の草野洋美さんは「SRHRは女性の権利であるのみならず、すべての人に関わる基本的人権です」として、恋愛感情や性的欲求を抱かないこと、妊娠・出産を選択しないこと、多様な性自認および性指向もSRHRの領域に含まれる重要な要素であると強調した。
CEDAW元委員長の林陽子さんは、「今年7月に最高裁大法廷で出された旧優生保護法の違憲判決でもCEDAWの勧告に触れている」と、審査・勧告の重要性を解説。勧告により日本の法令が改正された例として、離婚した女性の再婚禁止期間の廃止、婚姻年齢の男女同一化など家族法の改正、刑法の性犯罪規定の改正などを挙げ、「8年ぶりの審査が日本の『変えられない政治』を変えていく好機となる」と期待を寄せた。
会見した8団体のメンバーは現地入りし、CEDAW委員によるヒアリングや会議の傍聴などを予定している。選択的夫婦別姓や同性婚などの導入に反対している複数の宗教右派団体が現地入りして妨害行動されることも予想されるため、市民団体はお互いに協力し合う予定だ。
(『週刊金曜日』2024年10月11日号)