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名古屋市が保育士ら1200人を雇い止め 市長は責任放棄か

古川晶子・ライター|2024年11月25日8:34PM

 名古屋市立保育園で働く非正規職員の保育士ら1200人を対象に同市が今年度末での雇い止めを行なう方針を明らかにしたことをめぐり、愛知県労働組合総連合(愛労連)などが10月4日、東京・永田町の衆議院第二議員会館で緊急記者会見を開催。保育士らの雇用継続と、河村たかし市長(同月末で辞職予定=後述)に任命権者としての責任を果たすよう求めた。

記者会見で雇用継続を訴えた保育補助員の尾崎よしみさん(中央)ら。(撮影/古川晶子)

「私たちはモノではありません。大切な子どもたちと接するための知識や経験を積み、働き続けているその誇りを知ってください」

 市立保育園で30年以上にわたって働く尾崎よしみさん(保育補助員)は会見でそう訴えた。「正規職員をリスペクトしながら補助のプロとしてやっています」という、尾崎さんのような専門性と経験を持つ職員は現場に必須の人材だ。

 雇い止めの恐れがあるのは非正規の「会計年度任用職員」約1800人中、これまで4回更新した人たちである。この制度は自治体で働く非正規職員の処遇に関して2020年度に導入されたもので任用は1年度毎。更新回数の上限を設定する自治体が多く、上限に達する職員のポストを雇い止めという形で空け、公募で採用を行なう。名古屋市の上限は4回で、いわゆる「5年目公募」だ。これにより市立保育園では7割近くの職員が、どんなに有能でも今年度末でいったん職を失うことになる。

 会見に参加した、北海学園大学の川村雅則教授(労働経済専攻)は「公共サービスの担い手は継続が大事。コロコロ人が変わるのでは質が低下する」という。民間では非正規雇用の無期転換など雇用安定を目指す流れがある中で「会計年度任用職員」制度の導入はこれに逆行しており「公務員としての権利保障もなければ、民間の非正規労働者としての権利保障もない」と同教授は指摘する。

 更新回数の上限設定については総務省が6月28日、自治体に向けて事務処理マニュアルの改訂版を発行。そこでは再度の任用に関して「地域の実情等に応じつつ、適切に対応されたい」と、任命権者である自治体と首長の裁量で決められることを明示している。

 では名古屋市の実情はといえば人手不足である。会計年度任用職員の採用情報には市立保育園関連で毎月2桁の募集が出ている。保育運営課は取材に対し「保育事業が滞るほどの不足ではない」との認識を示すが、欠員があるのは確かだ。採用するなら「5年目公募」よりこちらが先決ではないかと尋ねたところ「この課では決められない」という答えが返ってきた。

市当局は“ゼロ回答”

 総務省の通知を受けて今年度、更新の上限を撤廃する自治体も出てきている。しかし名古屋市当局は組合側から7月22日に出された要望書「会計年度任用職員の5年目公募を中止してください」には答えず、組合側から重ねて出された9月27日「緊急の要求書」を受けて10月3日にやっと回答を出したが、その内容は「会計年度任用職員の取り扱いは、全庁的に統一された制度であるため、困難です」と、いわゆるゼロ回答だ。そして河村たかし市長は今月1日、27日に投開票となる衆議院議員選挙への出馬を表明した。任命権者としての責任を放り出す行ないである。

 尾崎さんはすでに一度、市立保育園での雇い止めを経験している。勤務していた園が隣の園と統合されたため非正規職員は全員雇い止めになった。働き続けるには試験を受ける必要があると言われて「保育者としての人生を不合格で終わらせるのは嫌だと思い」試験を受けて合格。「5年目でなくても雇い止めは起きています。後に続く若い方たちにこんな思いをさせたくない」と唇を噛みしめる。

 各地で上限撤廃の動きが出る中での名古屋市の姿勢は「逆の流れを作ってしまう恐れがある」と川村教授は語る。あえて公募を行なうことは地方公務員法第一条にある「地方公共団体の行政の民主的かつ能率的な運営」に反する無駄な行政コストの拡大でもある。制度導入5年目の今、この問題に自治体がどう向き合うかが問われている。

(『週刊金曜日』2024年10月18日号)

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