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JCJ大賞2024は『しんぶん赤旗日曜版』の自民党裏金問題スクープに

古川英一・JCJ事務局長|2024年11月25日8:49PM

 日本ジャーナリスト会議(JCJ)が優れたジャーナリストを顕彰するJCJ賞の2024年度第67回の受賞作が決まり、10月5日に東京・千代田区内で贈賞式が開かれた。

2024年度JCJ賞贈賞式の受賞者。(撮影/古川英一)

 大賞は、『しんぶん赤旗日曜版』の「自民党派閥パーティー資金の『政治資金報告書不記載』報道と、引き続く政治資金、裏金問題に関する一連のキャンペーン」に贈られた。

 10月1日に発足した自民党・石破内閣はスピード解散、衆院選は今月27日に行なわれる。自民党の派閥のパーティー券の裏金問題で政治とカネの問題が自民党を追い込み、10年余り続いた数の力による強圧的な政治をストップできるかの転換点を迎えている。こうした変化のきっかけを作ったのが、『しんぶん赤旗日曜版』の編集長、デスク、若手記者の3人がチームワークで成し遂げたスクープで、贈賞式には3人が揃って参加した。選考委員の上西充子さんは「朝日新聞の報道のように検察などに食い込んで情報を取るのではなく、赤旗は端緒の捉え方が違う。記者が政治家の2万円会費のパーティーに出席し、コロナ禍とはいえ何も飲食がなかったことに驚き、対価性のないパーティーに疑問を持ったのがきっかけで、そこから調査を進めた」と講評。続いてスピーチに立った編集長の山本豊彦さんが「実は石破派にも、政治資金パーティーの収入を政治資金収支報告書に記載せず、裏金処理していた疑いがあることをちょうどスクープしたばかりです。石破首相は裏金問題をまるで人ごとのように話をしてきました。それなら石破派はどうなのかを記事にしました(日曜版10月6日付)」と報告。さらに「長年、政治資金パーティーを追ってきましたが、それは企業団体献金が政治をカネで歪めることになるからです。裏金問題で刑事告発を続けている上脇博之さんのような専門家や市民と、これからもジャーナリズムが連携し、権力を監視していくことが私たちの目指す方向です」と決意を述べた。

最高裁への抗議デモも

 JCJ賞は新聞・出版・放送・映画の他に今年度から新しくネット報道の部門を設けた。JCJ大賞の他には、以下の4作品がJCJ賞に選ばれた。▼上丸洋一 『南京事件と新聞報道 記者たちは何を書き、何を書かなかったか』朝日新聞出版▼後藤秀典『東京電力の変節――最高裁・司法エリートとの癒着と原発被災者攻撃』旬報社▼NHKスペシャル 「〝冤罪〟の深層~警視庁公安部で何が~」「続・〝冤罪〟の深層~警視庁公安部・深まる闇~」NHK総合テレビ▼SBCスペシャル「78年目の和解~サンダカン死の行進・遺族の軌跡~」SBC 信越放送。

 ジャーナリストの後藤秀典さんは、『東京電力の変節』の中で最高裁判所の判事と大手法律事務所との関係を明らかにし、「この本が出て1年の間に最高裁の公平性を問う声が非常に増えてきている。最高裁が福島原発事故裁判で国の責任を認めない判決を出してから2年となる今年6月には1000人近くが、人間の鎖で最高裁を取り囲み抗議した」と手応えについてスピーチの中で語った。

 今年度の受賞作は、政治とカネ、司法の癒着の構造、警察の違法捜査と、日本の権力構造の闇をペンや映像で明るみに出した。一方で戦争とメディア、戦争責任と和解の問題について時間をかけた取材を重ね、丁寧に浮かび上がらせた。

 贈賞式でオンラインによる記念講演をした上脇博之さんは「権力は情報を隠そうとするが民主主義にとって情報は欠かせない。報道で知ることによって、私たちは新たなアクションを起こすことができる」と指摘した。ジャーナリズムと市民の連携こそが政治を、社会を動かしていく原動力になる。JCJ賞が少しでも、その架け橋になれればと思う。

(『週刊金曜日』2024年10月18日号)

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