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〈被団協にノーベル平和賞〉宇都宮健児

宇都宮健児・『週刊金曜日』編集委員|2024年11月25日8:52PM

宇都宮健児・『週刊金曜日』編集委員。

 ノルウェーのノーベル賞委員会は10月11日、2024年のノーベル平和賞を被爆者団体の全国組織である日本原水爆被害者団体協議会(被団協)に授与すると発表した。

 被団協は、広島や長崎の被爆者が中心となって1956年に結成された。国連の軍縮特別総会などで一貫して「被爆の実相」を世界に発信して「核廃絶」を訴え続けてきた。核兵器の開発や保有などを法的に禁止する「核兵器禁止条約」の締結に向けた国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」の国際的署名活動にも被団協は協力してきた。2017年7月には核兵器禁止条約が国連で採択され、ICANは17年のノーベル平和賞を受賞している。

 しかしながら、世界は核兵器の廃絶には向かっていない。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の推計によると、今年1月時点の世界の核弾頭総数は1万2121発に上っている。そのうち米国とロシアが抱える核弾頭が約9割を占める。中国は昨年から90発増やして500発となり、核戦力を急拡大しているが、中国を加えた核軍縮の枠組みは存在しない。また、北朝鮮も約50発を保有していると言われている。

 また、ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン大統領は核使用の威嚇を繰り返しており、パレスチナ自治区ガザの戦闘拡大で事実上の核保有国と言われているイスラエルと核開発を続けるイランが対立する中東情勢の緊張も高まっている。このような核軍拡の動きや緊迫するウクライナ情勢や中東情勢が、被団協のノーベル平和賞受賞の背景にあると思われる。

 ノルウェーのノーベル賞委員会のフリードネス委員長は、被団協にノーベル平和賞を授与する理由について、「被爆者の体験を伝えることで、核兵器の使用は道徳的に許されないという国際的な規範を作った。この規範は『核のタブー』として知られるようになった」と説明し、「核兵器が80年近く使われていないのは、彼らの貢献のおかげでもある」と、被団協の活動をたたえた。

 唯一の戦争被爆国を自任する日本政府は、ノーベル平和賞を受賞した被団協の願いを重く受け止め、核兵器禁止条約参加に踏み切るべきだ。また、国の指定区域外で被爆した「被爆体験者」を被爆者と認めて、すべての被爆者に補償の道をひらくべきである。さらに、日本で被爆した韓国被爆者に対する補償も行なわれるべきである。

(『週刊金曜日』2024年10月25日号)

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