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脱原発弁護団が原子力規制委員会の新委員任命に抗議 「虚偽繰り返す人物選ぶな」

佐藤和雄・ジャーナリスト|2024年12月10日5:50PM

 

「3・11」後に発足した政府の原子力規制委員会は「原子力に対する確かな規制を通じて、人と環境を守る」ことを使命とし、委員長を含む5人の委員で構成され、それぞれの原発の稼働を認めるかどうか判断する大きな役割を果たしてきた。今年9月に2人の委員が任期満了で退任し、新たに2人が委員として任命された。

オンライン記者会見で説明する中野宏典弁護士(左上)、海渡雄一弁護士(右上)、河合弘之弁護士の3人。(オンライン記者会見の画像から)

 この任命に対して脱原発弁護団全国連絡会(以下、脱原発弁護団)の河合弘之弁護士(他2人)が10月17日に記者会見を行ない、「中立性、独立性を疑わせる委員の選任」として任命の見直しを求める声明を発表した。

 9月19日から委員となった1人は、名古屋大学地震火山研究センター所長や東京大学地震研究所の教授などを務めた山岡耕春氏。

 山岡氏は2011年3月、東北地方・太平洋沖地震発生時には文部科学省の科学官として、内閣府地震調査研究推進本部の下にあった地震調査委員会の事務局を担当していた。脱原発弁護団が問題視しているのはこの時の対応だ。

 声明文によると、山岡氏は地震直後の地震調査委員会において、この地震や津波が想定されていたことを公表すべきだという意見が多くあがる中、「後出しジャンケンのように思われるのはよくない」と強硬に反対し、この地震が「想定外」だったとの委員会の見解公表を主導した人物であるという。

 11年当時、同委員会は02年の長期評価の改訂を準備し、3月9日には福島沖を含む日本海溝沿いで、「超巨大地震が発生する可能性がある」との長期評価の改訂版を公表する予定だった。

 ところが事務局(山岡氏)は他委員の知らないところで東京電力などと秘密会議を開き、その公表は4月に延期された。公表が延期されていなければ、宮城から福島にかけての海域で巨大津波を伴う地震が発生する可能性が9日夜・10日に広く報じられたはずだ。声明文では「津波による大量の死者は事前の警告がなされていなかったためと推察される」と改訂版公表の延期を重く受け止めている。

改訂版の隠ぺいを糊塗

 山岡氏は委員に選任された後、原子力規制委員会のホームページ(規制委HP)上で、「2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震は、私を含め地震学者の予想を超えるまさかの規模の地震で、超巨大地震による被害のすさまじさを見せつけられました」と述べている。しかし前述のとおり、山岡氏はこの地震が事前に想定された事実を認めながら、その公表に反対した人物であり、想定外ではなかったことを認識していた。声明文では「この一言は、自らの行った長期評価の改訂版の隠ぺいを糊塗するためになされた虚偽の説明である」と批判。「虚偽の説明を今もなお繰り返すような人物は、到底公正な人物とは言えず、法の定める『高い識見』を有する者、『人格が高潔』な者であるとは言い難い」と断じている。

 今回新任されたもう1人は、カナダのマクマスター大学元教授である長崎晋也氏。規制委HPでは「放射性廃棄物の処分に関する原子力研究の第一人者」と紹介されている。しかし脱原発弁護団は、長崎氏が1988年4月に四国電力に入社し、同社で約3年間勤務していたという経歴を挙げ「規制される側である原子炉設置事業者の従業員だった」と問題視。「原子炉設置事業者の従業員だった者で(原子力規制委員会の)委員に任命されたのは初めて」であり「国民の原子力規制行政への信頼を著しく損なう」と指摘。そのうえで、この新委員2人の任命についての再考を政府に求めるとともに、5人の委員の専門分野が偏っているとして、増員をするための法改正を行なうべきであると主張した。

(『週刊金曜日』2024年11月1日号)

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