明治神宮外苑再開発で樹木の大量伐採 住民の反対押し切り強行
吉永磨美・ジャーナリスト|2024年12月10日6:26PM
東京都の明治神宮外苑(新宿区、港区)で進められている再開発に伴い、住民らの反対活動が展開される中、神宮外苑の樹木の伐採が10月28日に始まった。伐採現場周辺は白い壁で囲まれ、脇の歩道も封鎖されており、住民が近づけない状態だ。
31日も現場には作業の機械音が鳴り響き、工事車両が何台も出入りしていた。この再開発をめぐっては署名や裁判といった住民の反対運動もあり、樹木の伐採本数など、事業者側が当初の計画を見直した。
事業者の説明資料によると見直しの結果、3メートル以上の高木の伐採については新ラグビー場や聖徳記念絵画館前の伐採本数を66本削減、16本を伐採から移植へ振り替えた。さらに枯損等による伐採本数を42本減らしたため、合計で743本だった伐採本数を124本減らし、619本となった。
21日に都の環境影響評価アセスメントなどの手続きの再申請・許可などを経て、伐採が始まった。
神宮外苑の再開発は三井不動産、宗教法人明治神宮、独立行政法人日本スポーツ振興センター、伊藤忠商事の4者が事業者で、区域は28・4ヘクタールに及ぶ大規模複合開発だ。計画では神宮球場と秩父宮ラグビー場の位置を入れ替えて整備し、高層ビル3棟を新設する。
再開発区域は都市計画法に基づき都市計画公園に指定されている場所で、都の「公園まちづくり制度」に基づいて実施されている。
都によると、神宮外苑地区のまちづくりの経緯として2015年から18年にかけて、都と「関係者」によるまちづくり協議が行なわれた。15年4月1日に「神宮外苑地区まちづくりに係る基本覚書」を締結。16年7月22日には「神宮外苑地区(b区域)まちづくり基本計画の検討に関する合意書」を締結し、18年3月30日に「神宮外苑地区(b区域)まちづくりの検討に係る今後の取組等に関する確認書」を取り交わしているという。
その後、アセスメントが実施され、22年2月9日には都の都市計画審議会が開催されたうえで、同年3月10日に「都市計画」決定された。23年2月には神宮外苑地区第一種市街地再開発事業の施行認可がなされたが、住民の反対意見が根強く、事業者が再開発の計画案の見直しを行なった。今年10月21日に環境影響評価審議会に見直し計画案などが報告され、伐採工事が始まった。
開発区域の解体工事や伐採工事は可能だが、建造物の建築などに関わる手続きはこれからだ。
風致地区にもかかわらず
そもそも再開発される明治神宮外苑は都市計画法に基づく「風致地区」に指定されている。風致地区とは、都市の風致(樹林地、水辺地などで構成された良好な自然的景観)を維持するため、都市計画法によって定められた地区だ。
大正時代の1919年に都市計画法が公布され、それに基づき26年に明治神宮外苑が風致地区に指定された。風致地区内では都市の風致を維持するために、一定の行為を行なう場合はあらかじめ許可が必要となっている。
東京都の場合、再開発が行なわれる前年の2014年には、それまで都が担っていた許認可権限を区市に移譲している。
風致地区の指定があったにもかかわらず工事が行なわれ、住民が原告となった訴訟が起きている。23年2月には住民が原告となって都の再開発認可の取り消しを、同年7月には新宿区に対する伐採認可取り消しを求める訴訟が始まった。
裁判では計画区域の一部を都市計画公園としての指定から外して、本来建てられないオフィスビルを建てられるようにした「制度濫用」などについて争っている。
伐採現場でケヤキの伐採を目撃し、裁判の原告でもある大澤暁さんは「新宿区は区民に知らせず、20年に風致地区のランクを変更して伐採を許可した。ランクの変更がなければ伐採はできなかった。区による風致地区の捉え方が、景観改変から守るためのものとは思えない」と話した。
(『週刊金曜日』2024年11月8日号)