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〈夜空を埋め尽くそう〉田中優子

田中優子・『週刊金曜日』編集委員|2024年12月26日5:15PM

田中優子・『週刊金曜日』編集委員。

 私はこの原稿を、カマラ・ハリスの大統領選敗北の落胆の中で書いている。やっぱり女は負けるのか、とつい思ってしまう。しかし違う。勝ってほしくない女性もいる。男女関係なく、人間としてのありようの問題なのだ。カマラ・ハリスは応援したくなる人だったから落胆した。

 それは人間としての違いだ。今年8月に亡くなった田中美津さんは、多くの女性から慕われていた。女性が男並みに出世しなければならないとは全く思っていなかったし、そういう主張もしなかった。平塚らいてうも同様で、それぞれの中にある才能を発揮することが平等の意味だ、とした。だから、社会が女性にそれを許さないのであれば、社会を変えねばならないのである。

 カマラ・ハリスの敗北の背景には、パレスチナ問題への民主党の姿勢もあったが、黒人男性たちの女性蔑視もあったという。米国はもっと豊かになれるはずだ、という思いもあったようだ。それぞれが夢をもち、それを誰かに託す。それが民主主義なのであるから、結果は受け止めねばならない。むしろトランプ支持者の醜い暴動を見なくてよかった。あれこそ民主主義の闇だ。ハリスは敗北演説の中で、「選挙に負けた側は、その結果を受け入れる、それがアメリカの民主主義の基本原則です」と言った。そのとおりである。

 ハリスの敗北演説は希望に満ちていた。「民主主義のための闘いを諦めることは絶対にありません。私たちは投票所で、法廷で、公共の場で、この闘いを続けていきます」「闘いには時間がかかることもあるのです。それは、勝てないということではありません。大切なのは、決して諦めないことです」。そして「すっかり暗くなって初めて星が現れる」という格言を引用し、そうであれば「空を、輝かしい十億の星の光で満たしましょう。その光は、希望、信念、真実、そして奉仕の光です」と締めくくった。

 トランプ政権への期待はある。米国に閉じこもる小米国主義だ。自国の農産物や技術で国内を豊かにして貧富の差をなくす。外国に派遣している軍隊を全て引き上げる。その他の多くの国も「小国家主義」の時代に入る。日本も食料自給率を高め、小規模水力発電や地熱発電など日本列島の中で開発する。しかしCOP(気候変動枠組条約締約国会議)や国連は継続できなくなる。それはそれで大問題だ。

(『週刊金曜日』2024年11月22日号)

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