CEDAW 日本に強い勧告 選択的夫婦別姓導入や女性議員増など特に強調
古川晶子・ライター|2024年12月26日5:32PM
女性に対するあらゆる差別を禁じた女性差別撤廃条約の進捗状況を検討する女性差別撤廃委員会(CEDAW)は10月29日、日本政府に対する勧告を含む「最終見解」を公表した。同17日、2016年以来8年ぶりにスイスの国連欧州本部で行なわれた日本審査にもとづいて発表されたものだ。
審査は前回の勧告にもとづき、どれだけ改善を進めているかが焦点。高い専門性を持つ委員が、日本政府の報告に加えて市民団体からのレポートなど、多角的に収集した情報をもとに質問を投げかけて評価する。
今回、達成できたものもあるが、圧倒的に課題が多い。60パラグラフにおよぶ勧告で指摘された内容は政治的格差、経済的格差、社会的格差、健康や暴力に関するもの、差別問題など多岐にわたる(左ページ参照)。また複数の事項について2年以内に実施状況を書面で報告することを求めるなど強いトーンが感じられる。日本政府が2年以内に書面で報告することを求められた事項は以下の通り。
・選択的夫婦別姓制度の導入
民法750条は夫婦同姓を強制しており、姓を変えるのは95%が女性と実質的に平等でない。女性に社会生活上の不利益やアイデンティティの葛藤を与えるとして、03年、09年、16年と改正を求める勧告をしているが、日本政府は今回の審議まで「no steps had been taken(まったく何も着手してこなかった)」と強い表現で指摘している。
・女性候補者の供託金減額(暫定的特別措置)
世界的に政治のパリテ(男女同数)が目標あるいは実現という潮流の中、日本は非常に遅れている。第5次男女共同参画基本計画に掲げる「国会議員の女性割合35%」を達成するため、立候補に要する供託金300万円を女性候補者には減額するよう求めている。
・避妊へのアクセス改善
緊急避妊薬は性行為から時間をおかずに服用することで効果が得られるが、日本では病院での処方が必要で時間がかかる現状がある。現在、試験中のOTC(店頭販売)を本格化し、未成年者の保護者同意要件を廃止するなど、アクセス改善が求められた。
・人工妊娠中絶の配偶者同意要件廃止
日本の母体保護法では一定の要件のもと中絶が可能だが、その場合、配偶者の同意が必要となる。先進国で日本だけの制度で、女性の自己決定権を侵害するものだ。
「勧告には市民社会レポートや現地でのロビー活動で、CEDAW委員に繰り返し訴えてきたことが反映された」と評価するのは、選択的夫婦別姓制度の法制化を求める一般社団法人あすには代表理事の井田奈穂さん。ジュネーブ入りして委員に訴えたことが伝わった感触を得たという。埼玉大学ダイバーシティ推進センターの瀬山紀子さんは「日本政府が勧告を受けて、現にある差別の問題に向き合い、撤廃に向けて動いていくことを心から願っている」と話す。女性差別撤廃をめざすNGOや専門家は、今回の勧告を心強く受け止めている。
ただ、今後の日本政府の対応には市民が目を光らせる必要がある。政府側の対応が非常にお粗末だったからだ。政府は岡田恵子・内閣府男女共同参画局長を団長に、男女共同参画局、厚生労働省、文部科学省、外務省、警察庁、法務省、こども家庭庁、内閣官房からなる約30人の代表団で審査に臨んだ。
審査は本来、委員会と「建設的対話」をする場所である。だがこの代表団の振る舞いは「建設的対話」にはほど遠いものだった。どの担当者も顔を上げることなく分厚いファイルをバサバサめくり、ときには「えーと次なんだっけ」という焦る呟きをマイクが拾う。そして見当違いの回答をする。