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「日本の死刑制度について考える懇話会」が提言 「公的な会議体」の設置を

佐藤和雄・ジャーナリスト|2025年1月22日6:38PM


 元検事総長、元警察庁長官、研究者、ジャーナリスト、犯罪被害者遺族、国会議員ら16人(別表参照)が委員となった「日本の死刑制度について考える懇話会」(座長は井田良・中央大学大学院教授)が11月13日、12回目の会議を開き、政府への提言を報告書にまとめた。委員全員の一致した意見として「早急に、国会及び内閣の下に死刑制度に関する根本的な検討を任務とする公的な会議体を設置する」ことを提言。今後、衆議院と参議院の議長や、政府の代表者である首相に向けて報告書を提出する予定だ。

日本記者クラブで会見する井田良中央大学大学院教授(右)と笹倉香奈甲南大学教授。(撮影/佐藤和雄)

 報告書では、この懇話会の「基本的な認識」として「現行の日本の死刑制度とその現在の運用の在り方は、放置することの許されない数多くの問題を伴っており、現状のままに存続させてはならない」との受け止めを強調。さらに「世論調査において国民の多くが死刑制度の存置をやむを得ないと答えているとしても、それらのことは、死刑制度を何らの改革・改善も行わず、現在のような形のまま存続させることの理由となるものではない」と指摘している。

 そのうえで具体的な提言として、死刑制度について根本的に検討する「公的な会議体」を設け、「法改正に直結する具体的な結論を提案すべきである」と求めている。

 さらに、この「具体的な結論」を出すまでの間は①死刑執行を停止する法律をつくることの是非、②死刑執行の当局者が執行を事実上差し控えることの是非、の2点について「検討課題とすべきである」と主張している。

袴田さん無罪確定で期待

 日本の死刑制度をめぐっては、かつて民主党政権が「死刑の在り方についての勉強会」を法務省内に発足させ、2012年3月には報告書をまとめたが、死刑制度の廃止論と存置論の説明がほとんどの部分で「一概にどちらか一方が正しく、どちらが誤っているとは言い難いものであるように思われる」と結論づけており、国民的な議論にはつながらなかった。

「日本の死刑制度について考える懇話会」委員(全16人)

 今回の懇話会発足では、日本弁護士連合会が提案し、座長となった井田氏らが委員の人選に携わったという。それが元検事総長らの参加につながり、民主党政権時代のものよりもはるかに具体的な内容につながった。あとは国会と政府が提言をどこまで真剣に受け止めるかで、死刑制度をめぐる議論が本格的に動き出すかどうかが、決まるのだろう。

 13日の記者会見で、座長代行の笹倉香奈氏は、前月に袴田巖さんの再審無罪判決が確定したことに触れ「あの事件は死刑制度自体への反省を社会に対して問うている。事件を通して死刑制度について議論してもらえる素地が、今の国会にはあるのではないかと期待している」と述べた。

 国会はわからないが、政府は提言を真摯に受けとめる気はなさそうだ。翌日、林芳正官房長官は記者会見で政府の方針をこう述べた。

「その罪責が著しく重大な凶悪な犯罪を犯した者に対しては死刑を科することもやむを得ない。現時点において死刑制度の存廃等について検討する会議体を設けることは考えていない」

(『週刊金曜日』2024年11月22日)

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