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東京・杉並に「9条の家」オープン 平和の発信拠点に

古川英一・ジャーナリスト|2025年1月22日6:53PM

 東京・杉並区の静かな住宅街、洋館風の造りを持つ普通の民家が「9条の家」に生まれ変わった。

 10月30日、開所式の午後には朝からの雨も上がり、晩秋の儚げな青空が顔を出した。数字の9や、赤や白に彩られた風船で少しおめかしした「9条の家」の前に、各地で憲法9条を支えに平和活動を続ける市民約40人が集まった。

東京・杉並にお目見えした「9条の家」。開所式には市民約40人が駆けつけた。(撮影/古川英一)

 並んでテープカットをしたのは名誉館長の伊藤千尋さんと理事長の金野奉晴さん。国際ジャーナリストの伊藤さんは元『朝日新聞』記者で、これまで世界80カ国余りを取材。現在は「九条の会」の世話人を務めている。金野さんは地元の山梨県で安保法制違憲訴訟の原告団長になるなど、この9年半、平和を訴える活動に取り組んでいる。もともとこの家は金野さんが亡くなった姉から引き継いだもので、ここに憲法9条の碑を建てようと伊藤さんに相談したところ「軍を廃止して平和憲法を作った中南米のコスタリカでは軍司令部を国立歴史博物館に変え、建物そのものが平和の象徴になった。この家はその博物館に似ている。まるごと『9条の家』にしたらよいのでは」との回答。金野さんも意気投合したのが設立のきっかけだという。

 あいさつで伊藤さんは、ウクライナやガザで戦争が続く一方、国内で石破茂首相も含め憲法改正に前向きな動きが進む現状に言及。「武力には武力ではなく話し合いを。憲法9条で世界を平和に、とのメッセージを広めていくのが日本の役割ではないでしょうか」と述べ、各地で建立中の憲法9条の碑の総数が来年5月には50カ所に届く見通しを紹介。「そして『9条の家』がオープンしました。ここを原点に平和を発信していきましょう」と呼びかけた。続いて9条の碑を5月に建てた東京・府中市のメンバーがオリジナル曲「命の九条」を合唱。門出を祝った。

市民外交の場として

 では、全国でもここが初めてという「9条の家」はどのような場になるのか。金野さんによると、1階はブックカフェで、十数人が軽食も取りながら交流や情報交換のできる場になる。世界の動きや平和の問題を若い人たちに知ってもらおうと、関連の書籍も並べる予定だ。2階は動画配信スタジオを設け「9条の家」の活動などをユーチューブ配信。対談形式の動画で週1回発信を目指すという。他にも動画上映が可能な集会室を作るなど、12月からこうした活動がスタートできるよう準備中だ。

 金野さんに改めて「9条の家」にかける意気込みを聞いた。

「世の中には私たちのような平和を望む人(平和主義者)のほうが、戦争をしたい人(戦争主義者)よりも圧倒的に多いはずです。それなのに今は少数派の戦争をしたい人たちに私たちは負けています。なぜ負けているのか? それは私たちがバラバラだからです。手をつなげば世界平和が実現するはずです。キーワードは憲法9条、非戦、戦争放棄。行動しなければ、9条もただの紙切れです。戦争には1ミリの正義すらありません。来年で安保法が成立してから10年になります。戦争が迫っているのだから一刻も早く立ち上げようと動きました。座って人を待つのではなく、外に出ていく、行動に出発する。そういう『動く家』に、市民外交の場にしたいのです」

 金野さんは穏やかだがきっぱりとした口調でそう語った。

(『週刊金曜日』2024年11月22日号)

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