「子どもの権利は私たちになぜ適用されないのですか――在留資格がない子どもの高等教育進学を考える」と題したシンポジウムが、11月16日に東京・千代田区の上智大学で開かれた。人間の尊厳と連帯を脅かすようなさまざまな問題を研究している同大学の「グローバル・コンサーン研究所」が主催。当事者らが「在留資格がないことを理由に受験を拒否された」などの体験を語った。

　在留資格のない子どもたちの多くは、入管施設への収容を一時的に解かれた「仮放免」の状態に置かれ、親が就労を禁止されているため、生活は困窮している。大学や専門学校への進学をあきらめたり、中退を余儀なくされたりする子どもも多い。

　こうした状況下、一般社団法人「反貧困ネットワーク」と「移住者と連帯する全国ネットワーク」（移住連）は２０２２年１月から「仮放免高校生奨学金プロジェクト」を開始。月額１万円（公立高校１カ月分の授業料に相当）の奨学金を届け、大学生や大学院生のチューターが高校生に伴走し、進学や高校生活上の相談にのる活動に取り組む。これまで41人の仮放免高校生を支援してきたという。

　今回のシンポジウムでは、まず活動についての報告に続き、支援を受けながら仮放免で大学や専門学校に進学した５人の若者たちが登壇。それぞれの体験を語った。

　助産師を目指して大学で学んでいるミラクルさん（仮名）は日本生まれだが幼稚園の頃に父が入管施設に収容され、小学１年生の時から11年間、仮放免の状態だった。バスケットボールが得意で、高校進学時には全国大会常連校からの推薦話もあったものの「海外遠征があるが行けるか」と尋ねられ、仮放免の状態では居住地から県外への移動が制限されているため推薦入学は実現しなかったという。大学ではクラスリーダーを務めており「今、在留資格がない子どもたちの中には、やればできる子が大勢いる。大人たちが決めた制度のために、そうした子どもたちの未来を妨げては絶対にいけない。そんな制度はなくなればいい」と力を込めて語った。

　美容専門学校に通うミライさん（仮名）はもともと日本語がよくわからなかったが、学んだ定時制高校には日本語教室があり、授業が始まる前に先生が一緒に勉強を教えてくれてよかった、という。進学先を探していた際に「外国人は受験できません」「仮放免の人は受け付けていません」などと多くの学校から受験を拒否された。「何かを学びたいのに、私は何も悪いことをしていないのに、外国人や仮放免だと、なぜ受け入れてくれないのか」と訴えた。

「国に帰ったほうが」

　シンポジウムの最後には、このプロジェクトで仮放免の高校生に伴走してきた大学生チューターの木村澄怜さん、金澤伶さん、勝股寧菜さんが登壇した。

　前述したミライさんのケースについて勝俣さんが補足してくれたところによると、専門学校８校に電話したり、オープンキャンパスに行って学校の担当者と交渉したりしたものの、そのうちの７校が受験と入学を拒否。「初めての事例に対応できない」という理由のほか、「国に帰ったほうがいいよ」などと発言する学校もあったとか。

　また、幼稚園の先生を目指していた高校生は、ある短期大学から受験を拒否された。「うちは在留資格のない人は受け入れない、というルールでやってきた」が理由だった。その結果、高校生は進路を別の道へと変更せざるを得なくなってしまったという。

「私が担当したケースでは、幼い頃に来日して日本で育ち、学力も足りていて、学びたいという強い意欲を持つ子たちが多かった」と勝俣さんは回顧した。そのうえで「在留資格がないという、本人には非がない理由によって受験が拒否されるという現状に直面している。在留資格による受験拒否は、性別や国籍や出身によって受験を拒否するのと同等に、あってはならないことだ」と指摘した。

（『週刊金曜日』2024年11月29日号）