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老朽美浜原発仮処分即時抗告審 新たな裁判長は証明責任論に強い関心

脱原発弁護団全国連絡会|2025年1月22日7:06PM

 美浜原発3号機運転差止仮処分の即時抗告審の第2回審尋期日が11月1日13時半から、名古屋高裁金沢支部で開かれた。今年3月29日の却下決定に対して不服申し立てをした即時抗告審。今回の期日では関電(相手方)からは、抗告理由書への反論書面が提出された。住民(抗告人)は10月5日に本件原発で発生した、海水を取り入れる冷却用配管の減肉を原因とする穴が確認され原子炉を手動停止するにいたったことについて、典型的な老朽化現象であり、運転停止すべきであるとの主張書面を提出した。審尋期日は非公開だが、終了後に記者会見を兼ねた報告集会が開かれた。

裁判所に入廷行進する住民ら。(写真/脱原発弁護団全国連絡会)

 弁護団共同代表の井戸謙一弁護士より、次のような報告があった。

「10月4日付で吉田尚弘裁判長から、新たに大野和明裁判長に代わった。よく言うと率直、悪く言うとあけすけで、オブラートに包まないで思っていることを、率直にしゃべっていた。話した内容は、本件の争点は、地震や老朽化など専門的な内容にわたるわけであるが、それについては裁判官はよくわからない、証明責任で決着がつくのだろうという」

「証明責任とは、証明対象事実(本件で言えば『住民らの人格権が侵害される具体的危険』)をどちらが証明する責任があるかというもの。住民が具体的危険があることを証明する責任があるのか、事業者が具体的危険がないことを証明する責任があるのか。裁判官がその事実の有無を判断できない時に、住民に証明責任があるのなら、その証明ができていないから住民が敗訴するし、事業者に証明責任があるのなら、事業者もその証明ができていないから、事業者が敗訴する。証明責任を負担する方が敗訴する」

「この証明責任論は原発訴訟では非常に大きな問題で、どの裁判でも前提として議論される。この裁判でも一審からしてきたが、一審は住民側に証明責任があるという判断枠組みを採用し、住民が負けたので、それが間違いであると抗告理由書で述べた。裁判長はそこをずいぶん読んだようで、実はそこにしか関心がないかのように、そのことをずっとしゃべっていた。さらに、われわれにその主張について補充するようにとまで求めた。あれがリップサービスなのか、本気で取り組もうとしているかはわからないが、われわれに主張の補充まで求めたのであるから、本気であると信じたい」

 住民側は、裁判所のリクエストに応えて、次回までに立証責任論をしっかり補充したいと考えている。

 次回期日は2025年2月28日13時半から。

(『週刊金曜日』2024年11月29日号)

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