「結婚の自由をすべての人に」訴訟 より踏み込んだ判決を期待
岩崎眞美子・ライター|2025年1月22日6:31PM
同性カップルの結婚を認めない現行民法や戸籍法は違憲であるとして、東京都内在住の当事者7人が国を訴えた「結婚の自由をすべての人に」訴訟で11月8日、原告側は先の東京高裁判決(10月30日)は不十分であるとして、最高裁に上告。受理された。
この裁判では、一審の東京地裁判決(2022年11月30日)が、同性カップルが「家族になるための法制度が存在しない」ことについて、憲法24条2項に違反する状態であると認定。一方で、同24条の記す「婚姻」が同性間の婚姻を含むものとの解釈はできないとして、婚姻制度に関する現民法や戸籍法の諸規定が24条違反であるとはいえないとした。だが続く二審の高裁判決は、同性間の婚姻を認めない現行法も性的指向による法的な差別的取り扱いであるとして、明確に違憲であると判断。19年に始まり、現在全国5地域で行なわれている一連の「結婚の自由をすべての人に」訴訟においては、今年3月14日の札幌高裁判決に続く、2件目の違憲判決となった。
東京弁護団共同代表の上杉崇子弁護士は、この東京高裁判決について、今回の上告後の記者会見で「同性間の婚姻を認めない現行法が違憲であるという司法判断の流れを決定的にした」と高く評価。法的差別を解消するための立法措置を直ちに取るよう促していることに触れ「国会は本判決の明確な違憲判断と適切な立法措置の要求を真摯に受け止め、大至急立法措置に取りかかる必要がある」と述べた。ただ、同判決が婚姻の自由に関しては同性カップルも異性カップルと同様に保障されると明言せず、現行の婚姻制度に準じる別の制度もあると述べたことや、国家賠償請求を退けたことなどを上告の理由に挙げ、最高裁でより踏み込んだ判決を期待するとした。
議論により社会を変える
記者会見に同席した原告の小川葉子さんと大江千束さんは、長年共に暮らすカップルだ。大江さんは、数年前に入院を必要とする病気をした際、後見となる人はいるかと問われ、小川さんを「同居している親友」として伝えるしかなかった経験を振り返った。
「本当なら『配偶者がいます』と言えれば済んだことです。彼女に本当に失礼なことをしたと、思い出すたび怒りを感じます。私たちは普段名前も顔も出して活動し、自分たちの関係を周囲に果敢に説明しています。けれども病気で具合が悪い究極の状態でも、自分たちのことを説明し続けなければいけない辛さをとても感じました」。
自身の親の葬儀の際にも、悲しみにくれる中で小川さんとの関係を親族に「説明」せねばならない理不尽に悔しい思いをした。これらの経験は「私にとって過去一番大きく揺るがされた」ものだったと大江さんは語った。
続けて発言した小川さんは、大江さんの悔しさを受け止めつつ、これまで裁判に取り組んできた歳月を「とても価値のある時間」だったと振り返った。同性婚を求める裁判の原告となったことで、周囲のコミュニティからもさまざまな反応があったという。マイノリティを抑圧する家父長制に連なる婚姻制度に「なぜ乗っかるのか」との批判もあった。
「そう聞いてくださる人がいることはありがたいなと思いました。その時に一生懸命説明できるからです。戦後に憲法や民法が変わり、家父長が認めなくても誰でも結婚できるようになったけれど、その中でジェンダー平等というものがどれだけ認められてきたのか。疑問はいろいろあるからです」。
異論や反論も含めて対話をしていくこと、議論の俎上に載せること――そのような動きが、社会を変えていくという実感がある。
「私たちの裁判によって、将来自分たちも同性同士で結婚できるかもしれないとの希望が生まれたという、若い人たちの声も届いています。これまで大変なことも多かったけれど、価値ある時間だったと思いたい。この尊い時間をもう少し続けていきたい。その気持ちをエンパワーに、最高裁に向かって進んでいきたい」(小川さん)
(『週刊金曜日』2024年11月22日)