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女川原発2号機の運転差し止め、控訴審でも認められず
佐藤和雄・「脱原発をめざす首長会議」事務局長|2025年1月23日6:43PM
自然災害と原発災害が同時に起きた場合などに、自治体は策定していた避難計画に基づいて住民の命を本当に守れるのか。守れる確かな根拠がないならば、原発の稼働は許されてよいのか――。
そのような住民の切迫した問題意識に基づいて起こされたのが、宮城県女川町と石巻市に立地する東北電力女川原発2号機の運転差し止めを求めた控訴審だった。しかし仙台高裁(倉澤守春裁判長)は2024年11月27日、住民側の請求を認めない判決を下した。避難計画の問題に争点がしぼられた訴訟での判決は初めてという。
住民らは女川原発の事故・災害に備えた避難計画について、
①予定されている避難退域時検査場所(検査所)は実際に開設できないか、開設しても継続できない
②自家用車と並ぶ避難手段であるバスの確保や配備もできないため避難できず、原発からおおむね半径5~30キロメートル圏内にあり、屋内退避などの防護措置を実施するUPZ(緊急時防護措置を準備する区域)内に閉じこめられる
との問題を示し「避難計画として実効性がないこと」を指摘した。
現在、すべての原発の安全確保の考え方として、五つのレベルの安全対策を示す「深層防護」が基本とされている。控訴審判決は、この深層防護について「それぞれ別の目標を持った複数の防護レベルの対策を用意し、それぞれの防護レベルで最善が尽くされることにより、全体としての効果が期待される」と位置づけた。
そのうえで、避難計画を含む第5レベルの防護を含む地域防災の在り方として「いかなる態様の事故にも完全に対応できる防護策ないし地域防災の策定は求められていないと考えられる」との判断を示した。さらに、住民らの主張について「避難計画に従った段階的避難又は屋内退避等の過程を踏まえたものではない」と指摘。住民らが「避難計画の定める措置が防護の効果をあげられない旨を主張するならば(中略)避難計画では対処できない事象が発生する具体的な蓋然性を主張立証すべきであるが、本件において、そのような主張立証もされていない」と述べ、原告である住民らの主張を退けた。
臨機応変に決定できる?
もう一つの争点は、内閣府の女川地域原子力防災協議会が、避難計画で避難所開設の条件や要員・資材の確保の有無などについて検討していないことを「看過し難い過誤や欠落に当たる」とする住民らの主張を認めるかどうかだった。
この点について判決は「本件避難計画は(中略)発生した事態に応じて臨機応変に決定し、段階的に避難を実施することを想定している」「実際に発生した異常事態の態様等が明らかになった時点で、原子力規制委員会等の指示に基づいて決定されることが予定されている」との理由を挙げ、「過誤や欠落はない」とした。
筆者ら「脱原発をめざす首長会議」のメンバーは今年5月、能登半島先端に建設される予定だった珠洲原発の建設予定地などを視察。その際に能登半島地震によって起きた道路の寸断、海岸部の隆起、家屋の倒壊が相次いだことで、半島の住民の避難や事故時の屋内退避がきわめて困難になるという、恐ろしい現実を知った。
はたして本当に複合災害が発生し、多くの自治体で混乱が生じる際に、さまざまな対応を「臨機応変に決定」などできるのだろうか。
原告側弁護団の小野寺信一団長は控訴審判決について筆者にこう語っている。
「一審判決のように避難計画の問題について門前払いではなく、中身に踏み込んだことは評価できる。しかし、内容があまりにもお粗末すぎる」
(『週刊金曜日』2024年12月6日号)
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