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日東電工、韓国子会社の大量雇い止め・団交拒否で争議

本田雅和・編集部|2025年1月23日6:50PM

 電子部品メーカー大手の日東電工(本社・大阪市)が、韓国に設立した100%子会社・韓国オプティカルハイテック(KOH)の「清算」過程で集団解雇や団交拒否を行ない、これに抗議した組合員らに対しても多額の損害賠償請求や個人資産差し押さえなどの報復措置と労働運動への弾圧を繰り返しているとして、韓国政界も巻き込んだ国際問題になっている。

日東電工・東京本社のある品川で「不当労働行為」を訴えるチェ・ヒョンファンKOH支会長(左)。(提供/尾澤邦子)

 韓国の全国金属労組(産別)は裁判闘争で対抗するとともに、会社側の行為はOECD(経済協力開発機構)の多国籍企業行動指針にも違反しているとし、韓日の政府連絡窓口(NCP)に「正当な組合活動や表現の自由など労働者の人権を尊重し、労使の話し合いで解決するあっせんをする」よう訴えた。2024年11月26日には日本の支援労組団体とともに日東電工を相手取り、大阪府労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てた。労組側が27日、東京の参議院議員会館で記者会見して明らかにした。

 労組側の訴えによると、日東電工は2003年11月、慶尚北道・亀尾市の国家産業団地に、用地の50年間無償貸与、法人税や取得税の減免などの恩恵を受け、18年間で7兆7000億ウォン(1ウォン=約0・1円)以上を売り上げている。

私たちは消耗品ではない

 ところが、22年10月、「管理不十分の漏電」で工場棟が全焼。KOHは11月に会社清算を発表して希望退職を募り193人を削減。退職に応じなかった17人を整理解雇。現在も7人が雇用継続を求めて闘い続けているというが、うち10年以上の在職経験のあるベテランのパク・チョンヘさんと同僚のソ・ヒョンスクさん(ともに組合幹部)の女性2人は今年1月8日、会社の建物の屋上に上り、以来、工場撤去阻止の籠城を続けて330日以上が経っている。

 彼女らの屋上からのメッセージの趣旨は次の通りだ。

「工場火災の1カ月後、KOHはたった1通のショートメッセージで各従業員に会社清算を通告してきた。一方で日東電工本社は、韓国内の別の100%子会社・韓国日東オプティカル(平沢市)に代替生産を準備させ、30人の新規採用もしている。私たちは使い捨て自由の消耗品ではない。人権闘争をしている労働者が工場撤去の妨害をしていると賃貸住宅を仮差し押さえをしたり、工場の電気や水の供給を断ったりしている」

 それだけではない。会社側は工場撤去に抗議した労働者を住居侵入の疑いで刑事告訴したり、日本国内のKOH労組を支援する会のメンバーに対し、日東電工の髙﨑秀雄社長宅近くやその周辺での「社長への面会強要やビラ配布などの街宣活動」を禁止する仮処分を申し立てている。

本社「労働争議を超える」

 筆者は日東電工本社に取材を申し込み、広報部門の求めに応じて事実関係の確認や見解などを尋ねる13項目の質問状を送った。同社は29日夕、広報部門を通して以下の趣旨の回答をしてきた。簡潔な事実関係の確認を求めた質問の多くには、具体的には答えなかった。

「労組指摘の事実関係及び評価に関しては、当社の認識と大きく相違している。当社は、韓国の法律あるいは法的手続きに則って会社清算手続きをし、雇用関係に関しても退職金の上乗せや再就職支援などに取り組み、多くの従業員には理解いただいているとの報告を聞いている。それらの適法性に関しては、韓国での地方労働委員会や中央労働委員会の各審判手続きや、別の裁判手続きでは労組の現地での行為につき、労働争議の範疇を超えるものとして不法占拠が認定されているところです」

(『週刊金曜日』2024年12月6日号)

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