〈混迷の時代、希望は市民運動の国際的連帯〉宇都宮健児
宇都宮健児・『週刊金曜日』編集委員|2025年2月10日3:23PM
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2022年2月24日、国連安全保障理事会の常任理事国であるロシアが国連憲章を踏みにじり、国連加盟国であるウクライナに対する軍事侵攻を開始した。ロシアのウクライナ侵略戦争は現在も続いており、戦争終結の見通しが立っていない。
また、23年10月7日に始まったパレスチナ自治区ガザにおけるイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘も終息していない。さらに、シリアでは父子2代で半世紀以上続いたアサド独裁政権が昨年12月8日崩壊した。中東情勢の先行きはますます不透明になってきている。
隣国韓国では昨年12月3日夜、尹錫悦大統領が突然「非常戒厳」を宣言し、戒厳軍の兵士を国会に突入させようとしたが、二度と軍事独裁政権の時代に後戻りさせてはならないと決意した多くの市民が国会周辺に集まり兵士と対峙し、国会が戒厳令の解除要求決議案を可決したため、戒厳令は約6時間後に解除された。12月14日には国会が弾劾訴追案を可決したため、尹大統領は職務停止となり、今後は憲法裁判所で弾劾訴追の是非が判断されることになる。韓国の政治も当面流動的になると思われる。
また、ドイツ、フランス、オーストリアなどでは、昨年行なわれた選挙で移民排斥や反欧州連合(EU)などを掲げる極右政党が躍進し、存在感を高めている。
このように国際情勢が混迷する中で、1月20日にはアメリカで「アメリカ第一主義」を唱えるトランプ大統領が再登場することになる。
国内的には昨年10月27日に行なわれた衆議院選挙で自民、公明の与党が過半数割れし、少数与党に転落した。国内政治も流動化の様相を呈している。
さらに、年々深刻化している地球温暖化・気候危機問題と貧困と格差の拡大問題は世界的・人類的課題となってきている。いずれも国際的な協調・協力なくして解決できない問題ではあるが、国際政治・国内政治とも前述したとおり、混迷の度を増してきている。
混迷する国際政治・国内政治を打開する鍵となるのは、自由と人権、平和、民主主義を求める市民運動、気候危機の解決を求める市民運動、貧困と格差の解消を求める反貧困の市民運動である。そして世界各国におけるこれらの市民運動の国際的連帯が今後ますます重要になってくると思う。
(『週刊金曜日』2025年1月17日号)