考えるタネがここにある

週刊金曜日オンライン

  • YouTube
  • Twitter
  • Facebook

【タグ】

女性リーダー支援基金授与式 第4回の受賞者に共通の活動テーマは「地方女子」

古川晶子・ライター|2025年2月10日3:19PM

 社会の意思決定過程に多くの女性が参画することをめざして2021年に創設された「女性リーダー支援基金~一粒の麦~」の第4回授与式が2024年12月21日、東京都内で行なわれた。公益財団法人パブリックリソース財団による基金で、受賞者に支援金100万円を授与するほか、応募者全員が参加できる勉強会などを通じて女性リーダー支援を行なう。

第4回女性リーダー支援基金の受賞者(前列)と審査委員および第3回までの受賞者。(撮影/古川晶子)

 第4回は全国から103人の応募があり、川崎莉音さん、坂本悠愛さん、佐藤真子さん、徳田玲亜さん、中谷衣里さん、森松明希子さんの6人が受賞した。審査委員の浜田敬子さん(ジャーナリスト)は「今回の受賞者の活動テーマには、地方在住のマイノリティという共通点がある」として、「地方女子の問題は非常に伝わりにくい」と指摘。課題を発信しても「被害妄想では」などと受け取られ、解決につながらない。今回はそこを突破しようとする行動力が評価のポイントとなった。

 兵庫県出身で東京大学在学中の川崎莉音さんは地方から東京への進学を考える女子高生の自己開発事業に取り組む。地元で同級生を見ていると、学力があっても「女の子はそんなに頑張らなくていい」という雰囲気があるのに対し、兄や弟は難関大学に進学するギャップが不思議だった。「大学に入り、それを構造的な課題だと認識した」ことが活動のきっかけとなった。考察をまとめた『なぜ地方女子は東大を目指さないのか』(光文社新書、共著)でも知られる。

 坂本悠愛さんは女子学生向けシェアハウスを運営する。大阪府出身で、現在は埼玉県の親戚宅に下宿して慶應義塾大学に通う。自分は親戚がいたが、そうでなければ経済的に東京の大学への進学は難しかったという経験から「進路選択とお金の問題は切り離せない」との実感を持って活動を始めた。

 中谷衣里さんは北海道でLGBTQ+の居場所づくりやSNS相談の活動を展開している。同基金でこの課題に取り組む女性の受賞

は初となる。14歳の時にレズビアンであることを自覚した中谷さんは「どんなセクシュアリティを生きる人でも、自分で自分の生き方を選択できる、そんな社会の実現に近づけていきたい」と語った。

受賞者同士もつながる

 前回までの受賞者による、直近の活動も報告された。第2回22年度の受賞者である井田奈穂さん(一般社団法人あすには)と福田和子さん(#なんでないのプロジェクト)は、24年10月に行なわれた国連の女性差別撤廃委員会による日本審査に市民社会レポートを提出し、現地ジュネーブにも赴くチームとして共に活動している。

 21年度の第1回受賞者である能條桃子さん(一般社団法人NO YOUTH NO JAPAN/FIFTYS PROJECT)は、若い世代の政治参加を促進するため、立候補可能な年齢を引き下げるロビー活動や公共訴訟などを実施。第4回の審査委員にも加わり、岩手県での女性議会開催を目指す佐藤真子さんに「これから一緒に活動できるのが楽しみです」とエールを送った。

 審査委員長の上野千鶴子さんは受賞者同士のネットワークを讃え「これからも新しい女性のつながりをつくってほしい。これだけの人たちが名乗りを上げているということが日本の希望」と激励した。


第4回受賞者

◆川崎莉音さん(NPO法人#YourChoiceProject) 
地方女子学生を取り巻く進路選択上のジェンダーギャップ解消を目指す。

◆坂本悠愛さん(MORE FREE)
東京の大学に進学する地方女子のためのシェアハウス「ハピネスト」を板橋区で運営。練馬区で2棟めを建設中。

◆佐藤真子さん(Compass) 
岩手県でジェンダー不平等解消を求める仲間と、市民団体Compassを立ち上げ、盛岡市との協働事業などを実施。政治家を目指す。

◆徳田玲亜さん(NPO法人風テラス/コモンズ法律事務所)
弁護士として、ソーシャルワーカーとともに性風俗店を訪問し、風俗に従事する女性に生活法律相談を提供。

◆中谷衣里さん(NPO法人北海道レインボー・リソースセンターL-Port)
札幌市内でセクシュアルマイノリティ当事者による当事者のための居場所や、セクシュアルマイノリティのためのSNS相談「にじいろTalk-Talk」を運営。

◆森松明希子さん(東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream)
東日本大震災後、福島県から大阪へ自主避難。災害時に「災害弱者」の人権が守られ、全ての人の尊厳が守られる社会を実現するため、体験者の発信活動を行なう。

(『週刊金曜日』2025年1月17日号)

【タグ】

●この記事をシェアする

  • facebook
  • twitter
  • Hatena
  • google+
  • Line

電子版をアプリで読む

  • Download on the App Store
  • Google Playで手に入れよう

金曜日ちゃんねる

おすすめ書籍

書影

増補版 ひとめでわかる のんではいけない薬大事典

浜 六郎

発売日:2024/05/17

定価:2500円+税

書影

エシカルに暮らすための12条 地球市民として生きる知恵

古沢広祐(ふるさわ・こうゆう)

発売日:2019/07/29

上へ