「ZEN大学」めぐる名誉毀損訴訟で判決 川上量生氏の請求棄却、控訴
岩本太郎・編集部|2025年2月17日7:53PM
通学不要、オンライン授業のみで卒業可能という“日本発の本格的なオンライン大学”を謳いIT(情報技術)大手のドワンゴが日本財団と共同で新設に向けた準備を進めてきた「ZEN大学」(学校法人日本財団ドワンゴ学園)を巡る名誉毀損訴訟(※注)の判決が昨年12月25日に下った。東京地裁(小堀瑠生子裁判官)は、原告でドワンゴ創業者の「かわんご」こと川上量生氏による請求をすべて棄却。被告の三宅芳夫氏(千葉大学大学院社会科学研究院教授)が勝訴した。
事の発端は一昨年の6月10日。同月開かれたZEN大学についての発表会を動画で視聴した三宅氏がSNSサービス「Fedibird」で「公的に疑問を呈したい」と投稿。過去に文部科学省の天下り問題に関与した責任を取って当時の職を辞した山中伸一・元文科事務次官が理事長を務めていること、認可されれば国から巨額の私学助成金を受け取る以上はそこに至る過程を知る権利が市民にはあるなどの主張を行なった(その後、同大学は文科省からの設置認可を受けて今年4月の開学が決定。ちなみにZEN大学は発表会で「国からの補助金を受けない方針」を表明)。
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これに対して川上氏は2日後にX(旧ツイッター)で「事実誤認」「日本の大学制度や法人についての基本的な理解を欠いている」「知識の無さを『説明責任』という言葉でコーティングして」いるなどと反論すると、三宅氏も再反論。「かわんごさんのヒステリー」と題した同12日付Fedibird投稿で、「事実誤認」という反論の論拠を川上氏が「一つも例を挙げていない」としたうえで「『印象操作』というものだ」「『説明責任』という概念を理解していない」などと指摘した。
川上氏はその後、三宅氏に対して謝罪と投稿の削除を要求した(三宅氏はこれを拒否)。
さらに同年8月25日付で前記の「かわんごさんのヒステリー」投稿などの削除と損害賠償金550万円、裁判費用支払いを求めて三宅氏を提訴した――というのが経緯だ。
あくまで論評の域と判示
今回の判決で東京地裁は、前記の「かわんごさんのヒステリー」投稿について「ZEN大学の設置について問題意識を持つ被告が、自らの主張を展開し、これと反対意見をもつ原告の意見に対して反論するものである以上(略)公共の利害に関する事項について、専ら公益を図る目的に出たもの」だと認定。さらに「被告の意見が前提とする事実は、その重要な部分において真実であると認められる。/また、『ヒステリー』、『印象操作』、『説明責任の概念を理解しない』との表現は、強い調子の批判ではあるものの、人身攻撃に及ぶなど意見又は論評としての域を逸脱したものとまではいえない」として、名誉毀損には当たらないと断じた。
さらに、三宅氏が前記に続いて投稿した「『かわんご』さんの『アウトロー宣言』」(23年6月13日付=こちらも削除要求対象)についても判示。この投稿は川上氏による前日の「法の穴を利用して悪いことして、捕まったことを怒っているひと多いけど、テレビゲームのやりすぎだと思う。(略)ルールなんて現実に合わせて変わって当たり前」というXでの投稿に関して、三宅氏が「『違法行為』を宣言している人のプロジェクト」などと述べたものだが、判決はこれについても前記と同様に名誉毀損を否定した。
また名誉権に基づく削除請求についても、三宅氏による以上2件の投稿が「原告の権利を違法に侵害するということはできない」として認めなかった。
判決を受けて三宅氏は、「クリスマスのお知らせ」と題して翌26日早朝にFedibirdで「私の側の完全勝利です」と報告。
一方の川上氏は判決後、本誌の今号校了時点までに判決について対外的に動きを見せていなかったが、控訴期限最終日の1月8日までに控訴した。
※注:『週刊金曜日』2024年1月19日号参照。
(『週刊金曜日』2025年1月17日号を一部訂正)