労働弁護団「非正規公務員制度立法提言」で当事者による学習会
古川晶子・ライター|2025年3月7日10:28PM
学校、図書館、保育所、またはさまざまな問題(失業やDV=ドメスティックバイオレンス、消費者問題等)の相談などにかかわる公共サービスの最前線で働く人の多くが「非正規公務員」であり、人々の人権保障そのものを担っている仕事に就きながら、当人自身の権利保障がない現状がある。

1月15日、東京都内でそうした当事者による学習会が開催され、現状の制度に対する憤り、法改正への期待の声が上がった。
学習会は「なくそう!官製ワーキングプア東京集会実行委員会」の呼びかけで行なわれた。憲法で保障された労働者と労働組合の権利を擁護することを目的に全国の弁護士が組織する「日本労働弁護団」が昨年11月に公表した「非正規公務員制度立法提言」(以下、提言=※)について知ろうというのがその趣旨だ。
講師を務めた同弁護団常任幹事の市橋耕太弁護士(旬報法律事務所)は「弁護団は非正規公務員が有する権利への擁護が弱すぎると考え、特別なプロジェクトチームを立ち上げて検討してきた。提言については今後さらにブラッシュアップしていくが、管轄する総務省にはすぐにでも具体的に取り組んでほしい」と述べた。
公務にかかわる非正規職員には複数の種類があるが、2020年度に導入された会計年度任用職員制度にあてはまる人々が66万人超と最も多く、臨時・非常勤職員の約9割を占める(23年度の総務省調査による)。
このため提言では会計年度任用職員を規定する地方公務員法の改正のあり方について条文案と理由を示している。
「フル」「パート」間格差も
提言の中心は「入口規制」「無期転換」「雇い止め制限」「均等均衡待遇」の四つだ。学習会では、それぞれについて次のような点が注目された。
◆入口規制(会計年度任用職員は「会計年度内に終了する職務」に限って任用)
現在、会計年度任用職員として働く人の職務は多岐にわたっており、単年度内に完結する性質ではないものも多い。市橋弁護士は「言葉通り、次年度も続く業務にあたるものを会計年度任用とするのはふさわしくない。単純なロジックだ」と説明した。
◆無期転換(任用が通算5年を超え本人が申請すれば「期間の定めのない非常勤職員」に)
民間では労働契約法18条の通称「無期転換ルール」が定められているが、自治体で働く非常勤職員にはこのルールがない。提言は、これについて「制度の濫用が定型的に確認できる」「無期転換権を認めるべきである」と指摘する。
◆雇い止め制限(本人が次期の任用を申請した場合は継続任用、申請1カ月以内に採否を通知)
民間では労働契約法19条に「雇止め法理」が定められ、労働者の無期転換権取得を妨げることを禁じている。提言は任命権者に対し、本人の申請があれば継続任用するように義務づけることを求める。この改正が実現されれば会計年度任用職員の最も大きな不安が解消されるだろう。
◆均等均衡待遇(給与その他の勤務条件に不合理な相違を設けない)
非正規公務員の低収入においては「官製ワーキングプア」と呼ばれる実態がある。提言は、職員の給与は職務と責任に応じたものであるべきで「不合理と認められる相違を設けてはならない」とする。また、現状では同じ会計年度任用職員の中でもフルタイムとパートタイムとの間に手当の支給に差が設けられている。市橋弁護士は、こうした格差についても「今すぐにでもやめるべきだ」と是正の必要性を強調した。
参加者からは「この提言が出たことはとても心強い」「大規模学習会でさらに知りたい」など実現に期待を寄せる発言が相次いだ。また、継続任用の場合も毎年、年度始めの4月から条件付き採用(民間でいう試用期間)とされる現状は「屈辱的であり、休暇が取れないなど不利益が生じている」という声も上がるなど、改正の必要性がさらに浮き彫りになった。
(『週刊金曜日』2025年1月31日号)