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火山学の水準を誤解した火山ガイド 異例の弁論続行、次回結審 川内原発許可処分は違法

脱原発弁護団全国連絡会|2025年3月7日9:53PM

 2024年12月18日、福岡高裁で川内原発設置変更許可処分取消訴訟の口頭弁論期日は結審を予定していた。被控訴人(国)が控訴人ら(住民)の巽好幸・神戸大学名誉教授の意見書に基づく主張について、時機に後れた攻撃防御方法であるとして却下を求めた。これに対して控訴人は、意見書は24年9月17日に作成され、これに基づく主張は10月24日に山口地裁岩国支部で巽教授の証人尋問を受けて行なっているので時機後れではないし、仮に時機後れだとしても、控訴人らに故意、重過失はないと反論。松田典浩裁判長は、別件の裁判の進行上やむを得ない面もあり、時機後れの判断はしないが、巽教授のご意見等は、これまで重要な問題として争われたことなので、結論として、弁論続行となった。

福岡高裁に入廷行進する弁護団、控訴人ら。

 結審はしないが、予定していた控訴人本人の意見陳述、双方代理人によるプレゼン資料を用いた最終準備書面の説明があった。

 1973年に14の団体・市民グループで結成された、川内原発建設反対連絡協議会の市民代表4代目の鳥原良子さんは、川内原発から12キロメートルに住み、桜島の爆発的噴火があると、約50キロメートル離れた薩摩川内市にも火山灰が降り、洗濯物を汚し、目や喉に影響を与えている現状を述べた。

 同じく控訴人の高木章次さんは、24年7月5日の証人尋問で、「一般的な科学施設とか危険な施設と原発の安全というものを、同列に考えているのですか」という質問に「同列に考えてはいけないという理屈が私にはわかりません」と回答した規制庁職員櫻田道夫氏が、規制庁の重要なポストで長年安全規制業務を続けていける理屈がわからないと断じた。大人は、子どもから「原発を動かしても大丈夫なの?」と聞かれた時、命をかけた責任ある返事をしなければいけないと声を詰まらせた。

 続いて、控訴人代理人の大河陽子弁護士は、①福島原発事故は、原発の稼働を優先し大津波の予測を無視した人災であるという教訓であり、この裁判の中でも、九州電力や国が、破局的噴火はあえて想定しないことが明らかになったこと、②火山学の水準について、第四紀学の第一人者である町田洋東京都立大学名誉教授、マグマ学の世界的権威である巽名誉教授の別件での尋問結果から、ⓐ噴火予測が困難であることは火山学者の共通認識であり、ⓑ火山噴火のメカニズムから、地下のマグマ溜まりの把握は困難であることを説明。原判決や近時の裁判例の中で、「個々の根拠に問題があるとしても、それらを総合して判断すれば、全体として合理性のある判断になる」というような判示があるが、巽名誉教授は、そのような評価は不可能で、不確実なものをいくら集めても信頼性は上がらないと一刀両断していると指摘した。証人尋問で、規制委員会が、火山学の水準を誤解して活動可能性を評価できるとし、モニタリングに依存したガイドを策定したことがより明白になった。

 甫守一樹弁護士は、破局的噴火に関わる審査会合は全部で4回で、火山の専門家は誰も関与しておらず、モニタリングで10年ぐらい前にカルデラ噴火の兆候を把握して核燃料を運び出せると勘違いをしているので、運用期間中に破局的噴火が発生する可能性が十分小さいということは主要な論点にしないまま許可処分を出した。勘違いに気づいても認めず、誤魔化し押し切ろうとしていると断じた。

 被控訴人は伊東真依指定代理人が口頭陳述要旨を、ほぼ読み上げる形で説明。

 次回口頭弁論期日は3月26日(水)午後2時からで、結審を予定している。

(『週刊金曜日』2025年1月31日号)

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