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性暴力事件で被害者の女性検事が会見 「厳正な処罰を」署名約6万筆

小川たまか・ライター|2025年4月1日8:16PM

 大阪地方検察庁の元検事正・北川健太郎被告人による女性検事への凖強制性交等罪事件に関して「女性検事を支援する会」のメンバーが1月27日、法務省と最高検察庁、大阪高等検察庁を訪れ、厳正な捜査などを求める署名を提出した。提出後に東京で開かれた記者会見には女性検事も出席した。

1月27日、署名提出後に開かれた記者会見に出席した女性検事(右)。(撮影/小川たまか)

 北川被告人は2018年9月、部下だった女性検事が抗拒不能の状態だったことに乗じて、長時間にわたり性加害を行なったとされる。女性検事は24年になって刑事告訴し、大阪高検が6月に北川被告人を逮捕、翌月に起訴した。

 女性検事は10月の初公判後に行なわれた記者会見で、被告人が起訴されて自身が職場復帰した後に、同僚である女性副検事が「(女性は)抗拒不能の状態ではなかった」「性交に同意していたと思う」などの内容を吹聴していたことを知り、再び休職を余儀なくされたと語っていた。

 北川被告人は初公判では罪を認めたが、第2回公判が行なわれる予定だった12月になって交代した弁護士が記者会見を開き、一転して無罪主張すると明らかにした。

 今回の署名が求める内容は「検察庁・法務省が北川被告人と副検事を厳正に捜査し、真相を解明すること」「裁判所が、北川被告人に長期の実刑判決と、副検事に厳正な処罰をすること」の2点。署名はオンラインで集められ、開始から約2週間で5万8967筆が集まった。

 女性検事の記者会見は今回が3回目で東京では初めて。記者席は満席で注目度の高さがうかがえた。

 女性検事は、2回目の記者会見後にあった2回の面談で、大阪地検の幹部から「口止め」があったことを明らかにした。女性検事が公の場で副検事について発言していることを問題視する内容で「これは上司として部下に対する指導」「一般的に被害者が公の場で発言するということは、捜査・公判に協力したくないのかと思ってしまう」といった発言のほか、懲戒処分をにおわす発言があったという。

 女性検事は「副検事をそこまで守る理由は私にはわかりませんが、そうやって事件を潰すような検察が果たして国民のみなさまの安全を守れるのでしょうか。私は検事だから知識もあって、ここまでやってきたけれど、それでももうボロボロです。一般の方々が、性被害を受けて苦しんでいる中で、検察がこんなに不適正で被害者に寄り添わない対応をしていては、被害を受けた方々は怖くて声を上げられない」と語った。

事件の社会的影響力示す

 記者からは「冒頭で被害者の立場でお話をされるとおっしゃったが、一方で検事でもある。『検事は法と証拠に基づき仕事をする』とよく言われる。署名を出す行為はその範囲の外、ある種、民意に頼らざるを得ない。それに賛同するということか」と質問があった。

 女性検事はこれについて「被害者でもあり検事でもある。たとえばセカンドレイプは被害者として受けているが、検事としての職場の中で受けているので、そこは切り離せない。法と証拠については、検事の仕事としておっしゃる通りだと思います」としたうえで、次のように回答した。

「ただ一方で(一般的に)判決文の中で『この事件が社会的影響力が大きかった』ことに言及して、それが刑を重くするための事情となることはよくある。この事件は法律を熟知した、被害者を守るべき検事正が行なった犯罪であるという意味で社会的影響力が大きい。それを証明したいとの思いはあります。(署名を)裁判所に出すのは、みなさんがこう言っているのだから重い処罰にしてくださいということではなく、こんなに社会的に影響力がある事件であることの立証に使わせていただけたらとの思いからです」

 会のメンバーのサポートにより、女性検事は「note」でも情報発信を続けている(https://note.com/unmetempathy0111)。

(『週刊金曜日』2025年2月7日号)

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