森友事件捜査関連資料の不開示めぐる控訴審判決 赤木雅子さんの訴え認める
粟野仁雄・ジャーナリスト|2025年4月1日8:24PM
判決の瞬間、法廷では拍手が起きたという。
「これまで裁判に勝ったことは一度もなかった。今回初めて勝って青木惠子さん(東住吉事件の冤罪被害者)に花束をもらい、本当に嬉しかった。家に帰ってさっそく、7年前に亡くなった夫に『勝ったよ』と報告しました」
控訴審判決翌日の1月31日、赤木雅子さん(53歳)は筆者の取材に朗らかにそう語ってくれた。
学校法人森友学園への国有地売却の経緯が記録された財務省の公文書の改竄を強いられ2018年3月に自殺した近畿財務局職員だった赤木俊夫さん(当時54歳)の妻・雅子さんが、非開示とされた捜査関連資料の開示を求めた訴訟の控訴審で1月30日、大阪高裁(牧賢二裁判長)は一審の大阪地裁判決(23年9月)を覆し、不開示とした国の決定を取り消すよう命じる判決を言い渡した。
これを受けて財務省は「近畿財務局の職員がお亡くなりになったことは誠に残念で、改めて深く哀悼の意を表します」としつつ「関係省庁とも協議し、今後の対応を検討したい」とコメント。判決は文書の開示を直接的に命じたものではないが、国は今後上告しない限り、開示か不開示かの判断から逃れられなくなった。
財務省はこれまで当該の文書が存在するのか否かも明らかにしてこなかった。同省と近畿財務局は捜査資料として当該の文書を任意提出しており、雅子さんは同文書についての情報公開を21年8月に求めたものの「捜査への支障」を盾に不開示とされたことから提訴した。
情報公開法は、例外として「存否応答拒否」を認めているが、それは「捜査や起訴の維持に支障を及ぼすおそれ」があった場合に限定される。この裁判では一審の大阪地裁は「将来の同種事件で証拠隠滅が容易になる可能性がある」としたが、今回の大阪高裁は「任意提出に応じる範囲は財務省側の判断に委ねられているので、提出したかを明らかにしたところで捜査方針まではわからない」「改竄をめぐる捜査は不開示決定時点で終わっていた」「将来の同種の捜査に支障を及ぼすおそれも認められない」として、不開示決定を違法と結論づけた。
国側は答申も誤りと主張
同裁判をめぐっては昨年3月、総務省が有識者らで構成した「情報公開・個人情報保護審査会」も「存否を答えても捜査に支障はない」として決定を取り消すように答申したが、財務省はこれを無視。控訴審でも「答申が間違っている」とする国側に対し、雅子さん側が「答申を無視する対応はきわめて異例。審査会制度をないがしろにしている」と批判していた。
今回の判決を受けて雅子さんの代理人を務める生越照幸弁護士は「俊夫さんのようなことになる公務員が二度と現れないよう、国は可能な限り開示に応じるべきだ」と改めて強調した。
森友学園をめぐる問題では破格の安値で国有地が同法人に売却されていた。安倍晋三元首相の妻、昭恵さんが同学園の経営者と懇意にしていたことなどが17年2月に報じられると、決裁文書から安倍夫妻の名前が削られるなど改竄が行なわれた。18年6月に財務省は文書改竄をさせた佐川宣寿理財局長らを処分したが、同氏はその後、国税庁長官にまで出世した。
雅子さんの告発を受けた大阪地検特捜部は佐川元局長らを公用文書毀棄などの疑いで捜査したものの不起訴とした。雅子さんは20年3月に国と佐川氏を提訴し、関連文書の開示を要求。損害賠償請求裁判も起こしたが、国は真相を隠すために争わずに「認諾」。請求額全額を支払っている。
「兵庫県知事の問題などで自殺者が相次いでいるニュースを見ていると本当に胸が痛みます。ご遺族はどんな思いなのか」と、昨今の世相に思いを寄せる雅子さんは、「夫がなぜ死ななくてはならなかったのか、誰が改竄を命じたのか真相を知りたい」として活動中。前出の青木惠子さんのような冤罪被害者の国賠訴訟の支援にも駆けつけながら闘い続けている。
(『週刊金曜日』2025年2月7日号)