旅券発給をめぐる安田純平さん、常岡浩介さんの控訴審判決 安田さん条件付き勝訴
佐藤和雄・ジャーナリスト|2025年4月1日8:51PM
危険な紛争地取材を経験したフリージャーナリスト2人に対し、旅券(パスポート)の発給を拒み、国外に出さないようにしている日本政府、つまり外務省の措置と判断が正しいかどうかが問われた二つの裁判の控訴審判決が1月30日、東京高裁(裁判体は異なるが、裁判長は同じ三角比呂裁判官)で連続して言い渡された。結果は一審の東京地裁判決とほぼ同じく、一人の訴えは外務省による旅券発給拒否が「違法」と認められ、もう一人の訴えは退けられた。

旅券発給の拒否が「違法」と認められたのは安田純平さん。安田さんはシリアの武装組織に2015年6月から3年4カ月も拘束された後に解放されトルコ経由で18年10月に帰国。19年1月に観光を目的として、イタリアなど欧州とインド、カナダへ旅行しようとして旅券の発給を求めた。だが外務省は「トルコへの入国が認められない者であるから旅券法13条1項1号に該当する」との理由から発給を拒否した。
控訴審で外務省側は安田さんへの旅券発給は「わが国の国益等にも重大な影響を及ぼすおそれがある」などと主張。安田さん側は「全世界への海外渡航の禁止ができる旅券法13条1項1号が時代遅れであり、国際常識に反し、それを支える立法事実がなくなっており、違憲である」などと主張してきた。
東京高裁はこの主張については「旅券法13条1項1号による海外渡航の自由に対する制約は、その目的及び内容に照らして合理的といえる」と認めなかった。しかし旅券発給拒否は「我が国の信頼関係を損なうおそれがあるとは認められない国への渡航を含めて全ての国への渡航を禁止するもの」であり「(旅券法13条1項)1号の目的に照らし、合理的かつ必要やむを得ない限度のものとはいえず、外務大臣が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用していたものといわざるを得ないから、違法である」との判断を下した。
その一方、トルコが安田さんに入国禁止措置を課したことを踏まえ「トルコと地理的に近接する国」への渡航によって「正規の入国手続きを経ずにトルコに入国することが考えられ(中略)トルコの利益が害されるおそれが生じる」と指摘。「トルコ及びトルコと地理的に近接する国」への安田さんの渡航を許さないのは認めている。
紛争地取材を認めず
この判決に対して安田さん側の岩井信弁護士は記者会見で「大きな問題は、旅券法13条1項1号という規定が違憲という主張が認められなかったことだ」と説明。安田さんは「多くの人が殺されている時にその現状を調べ、それを知らせるのが記者の仕事だ」と述べ、裁判所がそうしたジャーナリストの使命を理解していないことに不満を示した。
訴えが一審判決と同様に退けられたのがフリージャーナリストの常岡浩介さん。
取材のため19年1月、オマーンへ向かったが入国拒否され、翌月にスーダン経由でイエメンに入国しようとしたが出国直前に旅券返納を求められ、同年9月には発給拒否も伝えられた。
控訴審判決は常岡さんが「過去にも複数回にわたり退避勧告や渡航中止勧告が出されている国に渡航して身柄拘束を受けたり」したことなどを挙げ、旅券発給拒否処分は「合理的かつ必要やむを得ないもの」と結論づけた。
(『週刊金曜日』2025年2月14日号)