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原発事故時「屋内退避の目安は3日間」の規制委報告書案に自治体から疑問の声

佐藤和雄・「脱原発をめざす首長会議」事務局長|2025年4月1日10:03PM

 原発が冷却機能を失うなどの大事故を起こし、住民に放射線による影響が生じる可能性が高い状況を、政府は「全面緊急事態」と呼んでいる。原子力規制委員会(以下、規制委)が策定する原子力災害対策指針(以下、指針)では、この事態が発生した時、半径5キロメートル圏内(PAZ)の住民は遠方へと避難し、半径5~30キロ圏内(UPZ)の住民は「屋内退避を原則実施しなければならない」と定めている。規制委の検討チームは2月5日、この屋内退避期間の目安を「3日間」などとする報告書案を議論した。屋内退避の具体的期間などは現在の指針にはなく、原発周辺の自治体から求められていたものだ。ただ、検討チームのメンバーからは、説明や実施の難しさを指摘する意見などが相次いだ。

原子力規制委員会の検討チーム会議で進行役を務める伴信彦・原子力規制委員。(検討チームの会議映像より)

 今回の指針見直しは昨年1月、規制委が東北電力女川原発の地元や周辺自治体の首長との意見交換をきっかけとしたものだ。

 一部地域がUPZ内にある宮城県美里町の相澤清一町長は、規制委側にこう問題を提起した。

「原子力災害対策指針に基づき各市町が避難計画を策定しているが、実効性の確保が大きな課題になっている。指針には『段階的な避難やOIL(運用介入レベル)に基づく防護措置を実施するまでは屋内退避を原則実施しなければならない』とあるが、長期の屋内退避による心身の健康リスク、物資の枯渇、支援物資が届けられないなどの別のリスクもある。屋内退避は誰が何を基準にするのか」

実行の厳しさを指摘

 こうした問題提起を受けて、規制委は検討チームの発足を決定。原子力規制庁が報告書案の起草を務め、有識者や自治体関係者らもメンバーとなる検討チームが昨年4月から議論を重ねてきた。

 報告書案は、屋内退避について原発事故によって発生したセシウム137などの粒子状物質を含む放射性雲プルームによる「被ばくの低減を目的とする防護措置」と説明し、「プルームが通過してその地域に存在しなくなっている時点では、もはや屋内退避を継続する必要性は乏しい」と述べた。

 そのうえで災害対策基本法に基づき政府が策定する防災基本計画で、災害全般への備えとして水や食料の備蓄量を「最低3日間分、推奨1週間分」としているのを踏まえ、「3日間を屋内退避の継続期間の一つの目安とする」と具体的な日数を示した。

 報告書案を起草した原子力規制庁は同日、屋内退避に関して詳しく解説したQ&A案も検討チームメンバーに提示した。関係する自治体が、住民から説明を求められた場合に分かりやすく伝えるためのものだ。

 その中で、屋内退避を3日間とした根拠については①原発事故が全面緊急事態のレベルにあり、屋内退避の解除には数日かかる②災害時に生活を維持するための物資の備蓄量としては最低3日間とされている③長期に屋内に留まるのは生活にストレスを与える――と述べている。

 ただ、その一方で報告書案では、実際には自然災害と原子力災害が同時に発生する「複合災害」になると思われることから、自然災害の後に原発が全面緊急事態になり、屋内退避が開始される時点では3日分の備蓄が残っていない場合も想定されると指摘。こうした場合には、「(国が)屋内退避の継続が可能であるかを判断する必要がある」と述べている。

 2月5日の検討チームの会議では、メンバーから「屋内退避の目安を3日間」にすることへの異論は出なかった。しかし、実際にこの内容で対応できるのかという疑問が強く示された。たとえば宮城県庁の担当者は「よくまとめていただいたが、自治体としてはやはりこれを実行していくのは、なかなか厳しい。(災害時に)食料はどこでもなくなってくる。この場合には(避難は)全域を考えざるをえないのではないか」などと指摘した。

 報告書は、指摘された点などを反映したうえで、3月にも正式にまとめられる予定だ。

(『週刊金曜日』2025年2月21日号)

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