〈国際刑事裁判所(ICC)を守れ!〉宇都宮健児
宇都宮健児・『週刊金曜日』編集委員|2025年4月1日9:18PM

トランプ米大統領は2月6日、国際刑事裁判所(ICC)がパレスチナ自治区ガザへの攻撃を巡ってイスラエルのネタニヤフ首相らに逮捕状を出し権力を濫用したなどとして、ICC職員らに制裁を科す大統領令に署名した。
ICCは人道に対する罪や大量虐殺、戦争犯罪に問われた個人を訴追、処罰するための常設の国際刑事裁判機関で、2002年オランダ・ハーグに設置された。
ICCは23年3月には、ロシアによるウクライナ侵攻を巡りプーチン大統領に対し、戦争犯罪の容疑で逮捕状を発行している。また、24年3月には日本人の赤根智子氏がICCの所長に就任している。
トランプ大統領がICC職員に制裁を科す大統領令に署名したことを受け、大統領令を批判する動きが広がっている。
米国・ニューヨークに拠点を置くNPO「憲法権利センター」のビンセント・ウォーレン事務局長は2月6日、「ICCへのトランプ氏の制裁は法の支配に対する攻撃だ」とICCへの制裁を強く非難した。
また、ICCの赤根所長は2月7日、「裁判所の独立性と公平性を損ない、罪のない犠牲者から正義と希望を奪うことを求めるものだ。断固拒否する」と非難する声明を発表し、「世界のすべての国々にICCを擁護するために団結することを呼びかける」と訴えた。
さらに、ICCに加盟する125の国・地域のうち、79カ国・地域も2月7日、「最も深刻な犯罪が免責されるリスクを高め、国際的な法の支配をむしばむ恐れがある」と批判し、「ICCの独立性、公平性、および誠実性に対する揺るぎない継続的な支援を再確認する」との共同声明を出している。
この共同声明には、英、独、仏、カナダ、オランダなどが名を連ねているが、日本は含まれていない。日本人の赤根氏がICCの所長を務めている上に、日本政府が日頃より国際社会における「法の支配」を強調していることを考えれば、日本も当然共同声明に加わるべきであった。
石破茂首相とトランプ米大統領の会談に悪影響を与えることを懸念したのかもしれないが、あまりにも腰が引けた情けない対応といわねばならない。
日本政府は米国に対し、ICCへの制裁の撤回を求めるとともに、ICCを擁護する立場を明確にするべきだ。
(『週刊金曜日』2025年2月21日号)