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戦争を「ジブンゴト」に 反戦平和活動の若者たちが横須賀に集結

竪場勝司・ライター|2025年4月11日1:13PM

 全国各地で反戦平和活動に取り組んできた若者らによるイベント「戦争をジブンゴトにするとは~広島、長崎、沖縄、横須賀から問う~」が、2月15日に神奈川県の横須賀市で開かれ、世代を超えた参加者同士が戦争や平和について語り合った。

2月15日、横須賀市内で行なわれたイベントの模様。(撮影/竪場勝司)

 イベントは核兵器廃絶を目指す若い世代らによる「一般社団法人かたわら」と横須賀YMCA運営委員会が共催した。「かたわら」では昨年3月、戦争体験の継承について考えるイベントを開催しており、ここからさらに世代間対話を深めるべく、かねて交流があり、自衛隊や米軍の基地を抱える同市の人たちに相談したところ「ぜひ横須賀という地域とも結びつけて考えたい」との意向が寄せられ、今回の共催につながった。

 まずイベントの前半では、20代の4人が登壇のうえ各地の活動を報告。「かたわら」の代表理事で広島県福山市出身の高橋悠太さんが「過去から何を学ぶのかという視点で話をしたい」と切り出したうえで「被爆体験の継承はとても大切だが『何のために体験を知るのか』というところまでの議論が深まっているのか」と問題提起。「広島は多くの被害を受けた地であると同時に、多くの兵士を世界に送り出す軍都でもあった」との視座の下「(1945年)8月6日の午前8時15分から始まる物語が、この社会には多く残っている。だが、急に原爆が降ってきたわけではない。徐々に戦争と近い日常が進んできた結果としての8時15分だった」と指摘した。

 開催に協力した横浜YMCAの高井陽一朗さんは、横須賀が米軍基地になっていることの問題点として「原子力空母の配備」「地域的な環境被害」「騒音」の3点を列挙。今回のイベントに先駆けて自身と同世代の若者50人を対象に実施したアンケートでは「基地についてどう思うか」という問いに対して「賛成」や「反対」よりも「どちらでもない」との回答が多数を占めたこと。また、横須賀でも配備が予定される米国製巡航ミサイル「トマホーク」について「知っている」と回答した若者が全体の40%だったことを挙げた。後者の質問については39年前の成人式に行なった同様のアンケートでは「知っている」が93%だったそうで「平和や戦争に対する関心が薄れてしまっているのではないか」と高井さんは危惧を述べた。

「犠牲の上の平和」は危険

 沖縄出身の平和学習講師である仲本和さんは沖縄国際大学在学中から基地問題や戦争に関する歴史の継承活動に取り組み、これまで2万人以上の学生からアンケートをとってきた。そうした経験から「戦争を繰り返してはいけないとはわかっているが、自分のことに置き換えて考えるのは、なかなかむずかしい」と分析。住民の4人に1人が亡くなった沖縄戦の特徴として、沖縄の人たちはスパイ視されたうえに強制的に集団での死を選ばされたという点を指摘し、「『これだけの犠牲者が生まれたから戦争はいけない』というのは正しいのか。『犠牲の上の平和』とのワードは危険だ。彼らの死を利用して、次の平和をつくろうという言い方を僕らは危惧しなくてはいけない」と警鐘を鳴らした。

 佐賀県出身の藤田裕佳さんは、

高校生平和大使として核兵器廃絶運動に携わり国連にも行った経験を持つ。長崎大学に進んだ後には核兵器をめぐる問題について深く勉強する「ナガサキ・ユース代表団」の活動に精力的に取り組み、現在では一橋大学の大学院で安全保障論を学ぶ。「『ジブンゴトにする』とは、すなわち知ることの連続だと思う。広島、長崎、沖縄が特別だからではなく、すべての人がすべてのことと向き合うことが大切だ」と力を込めた。

 後半では約30人の参加者が四つのグループに分かれ「なぜ各世代が戦争の記憶と向き合う必要があるのか」などのテーマで議論。各グループから「各世代でそれぞれやり方があり、それらを尊重することが大事だ」「家族の歴史から見えてくるものもあり、話したがらない加害の記憶もある」などの意見が上がった。

(『週刊金曜日』2025年2月28日号)

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