大規模火災の岩手県大船渡市の現地ルポ 被害拡大、長引く避難生活
藍原寛子/吉永磨美・ジャーナリスト|2025年4月22日5:59PM
岩手県大船渡市の沿岸部で2月19日から山林や民家の火災が相次ぎ甚大な被害が生じた。3月10日で避難指示は解除となったが、自宅の焼失などで避難生活を送る人は多数にのぼっており、避難の長期化が懸念される。絶えず複数の煙が立ち上り、サイレンを鳴らして消防車が往来していた現場を取材した。

同市などによると、19日以降に同市沿岸部で起きた火災は5件。19日に同市三陸町綾里で山林火災が発生し、25日15時5分に鎮圧。この鎮圧から15分後、直線距離で約9キロ離れた陸前高田市小友町で山林火災の通報があり、大船渡市末崎町まで延焼した。この火災は26日正午に鎮圧されたが、約1時間後に同市赤崎町合足地区で火災が起きた。通報者は合足漁港付近にいた人だが、火災の原因は不明。そしてほぼ同時刻に、再び三陸町綾里で新たに2件の山林火災が確認されたという。
これらの火災を受けて同市は、26日13時台には岩手県を通じて自衛隊に派遣を要請。14時台に消防庁に各都道府県の消防本部や航空隊で編成する「緊急消防援助隊」の応援を要請した。同日から消防隊員による消火活動が始まり、翌日から自衛隊もこれに加わった。
自衛隊は3月2日に消火活動のための給水先を大船渡湾外から湾内へ移し、ヘリコプターで海水を汲みあげて山林に撒く活動も始めた。だが火の手は衰えを見せず、2月26日の合足地区からの火災では住宅や山林など約2900haを焼失。建物210棟が被害を受けた(3月9日17時現在)。
住民「先が見えない」
同市は2月26日、綾里などの火災現場近くに住む住民に対して避難指示を出した。3月5日に雪や雨が降るまでは乾燥注意報、強風注意報の中で火災は拡大。避難指示の対象が増えていった。最大で避難指示区域の住民4596人が避難対象となり、避難所はのべ14カ所(福祉避難所含む)設置した。施設外の親戚宅などの避難者や車中泊を含め最大で計4310人が避難した。
2日に取材した「三陸公民館」に避難中の綾里に住む内装業男性(70歳)は「自宅にいたが煙がすごかった。防災無線で逃げるように指示があり逃げた。いつまで続くのか。先が見えない」と不安を訴えた。消化活動で、火災現場に続く道路は通行止めとなり、周辺の小中学校も休校。近隣の三陸鉄道は運転を見合わせた。
5、6日に降った雪や雨で火災が鎮圧方向に向かい、7日から避難指示が徐々に解除。9日には同市が鎮圧宣言を出した。10日には全区域の避難指示が解除された。
避難所も9日時点で9カ所に縮小されたが771人が避難したまま避難所以外の避難者と合わせて計2124人が避難している。4日からは同市社会福祉協議会でボランティアセンターを開設し、希望者登録を受け付けている。
(『週刊金曜日』2025年3月14日号)