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「非常戒厳」は「違憲」で尹錫悦・韓国大統領を罷免 60日以内に大統領選挙

文聖姫・発行人|2025年4月23日7:33PM

 韓国の憲法裁判所は4月4日、国会に弾劾訴追された尹錫悦大統領(64歳)に対し、罷免を宣告した。憲法裁の裁判官の定数は9人だが、1人が欠員のため8人で審理し、全員一致で決定した。尹氏はただちに失職した。8人の裁判官の内訳は進歩3人、中道3人、保守2人で4人が女性。尹氏の罷免にともない、60日以内に次期大統領選挙が行なわれる。韓国メディアは6月3日投票が有力と報じている(4月7日時点)。

尹錫悦前大統領。(提供/ロイター・アフロ)

 憲法裁は、尹氏の「非常戒厳」宣布や国会への軍・警官投入など五つの争点について、すべて「違法」・「違憲」だと認定した。「国会の弾劾訴追、立法などの権限行使が、戒厳令の宣布当時に重大な危機的状況を発生させていたとみることはできない」と認定し、「被請求人(尹氏)が主張する国政のまひ状態や不正選挙疑惑は、政治的、制度的、司法的手段を通じて解決すべき」で、「兵力を動員して解決できるものではない」と指摘。「国防部長官に国会への軍隊投入を指示」し、「陸軍特殊戦司令官らに『ドアを壊して中に入り、中の人員を引きずり出せ』」などと尹氏が指示したことが、「政党活動の自由、国軍の政治的中立性を侵害した」などと断定した。また、「自分を支持する国民を超えて、社会共同体を統合しなければならない責務に違反」したと断じた。一方で、野党による「多数の弾劾訴追」などによって、尹氏が「国政がまひし、国益が著しく阻害されていると認識し、打開しなければならない」と感じたことには一定の理解を示した。

 憲法裁判所は、憲法改正を受け入れた1987年の「民主化宣言」に基づく直接選挙による大統領選実施後、88年に設立された。

内乱罪で刑事裁判も

 韓国で大統領が弾劾訴追によって罷免されるのは、2017年3月の朴槿恵氏についで2人目。次期大統領が決まるまで、大統領の権限は、韓悳洙首相が代行する。

 弾劾審判では11回の弁論が行なわれた。2月25日に最終弁論が開かれ、結審した。尹氏も出廷し約70分間にわたって意見陳述。「非常戒厳」宣布の正当性を改めて主張していた。過去に現職大統領として弾劾訴追された盧武鉉氏と朴氏の場合は、結審から約2週間後に決定が出されたが、今回は1カ月以上を要した。

「聯合ニュース」によると、4日、尹氏支持者の男性が棒で警察車両の窓ガラスを割り、連行された。翌5日にはソウル市内で賛成・反対両派がそれぞれ大規模集会を開いた。弾劾を求めていた団体らの集会には警察の推計で約8000人が参加し、「民主主義の勝利」などと喜びを表した。反対派の集会には警察の推計で約1万8000人が参加し、「尹大統領復帰」などと訴えた。

 尹氏は「非常戒厳」を巡り、内乱罪で刑事責任も問われている。1月に逮捕・起訴された後、検察の手続きに瑕疵があったなどとして3月に釈放された。4月14日に初公判が開かれる。

(『週刊金曜日』4月11日号)

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