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兵庫県知事問題、「パワハラ」認定も齋藤元彦氏は元局長への処分撤回や謝罪はせず

粟野仁雄・ジャーナリスト|2025年4月23日7:52PM

 兵庫県の齋藤元彦知事をめぐるパワハラなどの疑惑について、県が設置した第三者調査委員会(藤本久俊委員長)が調査報告書を3月19日に公開した。調査対象は内部告発や職員へのアンケートを通じて寄せられた16項目で、このうち10項目を「パワハラ」だと認定。これを受けて齋藤知事は同26日「真摯に受け止めたい」と初めて謝罪の言葉を述べた。だが、内部告発文書を作成した渡瀬康英・元西播磨県民局長(昨年7月に死去。自死とみられる)への懲戒処分の撤回や謝罪は述べなかった。

3月19日、兵庫県庁で県側に報告書を渡す第三者調査委員会の藤本久俊委員長(右)。(撮影/粟野仁雄)

 報告書ではまず、渡瀬氏による告発文書を「公益通報にあたる」としたうえで、知事が通報者捜しを行ない、渡瀬氏が同文書を作成した公用パソコンを回収したことが「公益通報者保護法に違反する」と認定した。退職直前の渡瀬氏を内部調査だけで停職3カ月の懲戒処分にしたことも「違法で無効」、昨年3月27日の会見で知事が渡瀬氏について「公務員失格です」と述べたこともパワハラだとした。

 2023年秋、大阪市と神戸市で行なわれたプロ野球阪神、オリックス両チームの優勝パレードをめぐるキックバック(還流)疑惑では、パレードの経費不足を受け、齋藤知事が信用金庫などに協賛金を求めて補助金の増額で補填したことが県に損害を与えたとして、知事と片山安孝元副知事が「背任罪」で告発された。報告書は片山氏について「各信金に協賛金を依頼する際、補助金の予算を増額する旨を告知したことをうかがわせる証拠は見当たらなかった」とする一方「決定的な役割を果たしたことが疑念を抱かれる原因になったことは指摘せざるを得ない」と認定。県信用保証協会の理事長だった片山氏が23年11月、ある信用金庫理事長に協力を求めて各信金から入金された経緯がある。また、県は22年から中小企業経営改善のため金融機関に補助金を交付しており、担当部署の産業労働部が1億円の予算要求をしたのに対し、片山氏は財務部に4億円とするように指示。知事査定で4億円にアップされたことも認められた。

自身は減俸すら認めず

 今回の第三者委報告は、3月4日公表の県議会百条委員会の報告以上に齋藤知事には手厳しい内容だ。だが知事は渡瀬氏の告発は「誹謗中傷性の高い内容。当時の判断としてはやむを得ない適切な対応」とし、自らへの処分を問われても減俸すら認めなかった。

 百条委で知事を追及した県議の竹内英明氏は立花孝志「NHKから国民を守る党」党首らの脅迫に悩み死去(自死とみられる)。同氏をよく知る「ひょうご県民連合」の迎山志保県議は「この期に及んで適切だったと言い切るところは信じられない。他人に厳しく自分には甘くですね」。

 百条委の委員だった共産党の庄本えつこ県議も「百条委は『パワハラ行為と言っても過言ではない』にとどめたが、パワハラと言っているのと同じ。それを『一つの見解』と一蹴され、委員は会派問わず怒っています」と憤る。

 再度の不信任案提出について各会派は「今のところはない」(自民党の北野実県議)と慎重だ。県政を長期間見つめてきたある事情通は「4年前、初当選して登庁した齋藤さんは職員に『すべての責任は私がとるので、失敗を恐れず、前例主義にとらわれず挑戦してほしいです』と激励した。しかし昨年からの知事の言動に、多くの幹部職員は、あの言葉はなんだったのかと失望しています」と話した。

(『週刊金曜日』2025年4月11日号)

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