死刑弁護人 安田好弘
この国の刑事司法の矛盾を体現している弁護士がいる。安田好弘さん(六四歳)だ。彼ほど、事実に徹底的にこだわり、被疑者・被告に寄り添う弁護士は少ない。そのため、困難な刑事事件が集中し、「あんな悪者を弁護するのか」と、新聞やテレビに叩かれ続けている。安田さんを主人公にした映画『死刑弁護人』が公開されるのを機に、刑事弁護とはなにかをあらためて考える。
●「赦すという前提があれば死刑囚の意識は変わる」 聞き手 森 達也法廷は民意に大きく影響され、民意はメディアに影響されている――森死刑廃止派は“鬼畜”だとのイメージを多くの人が持ってしまった――安田◆齊藤潤一監督に聞く「死刑について考えるきっかけに」「悪魔の弁護士」と呼ばれてもなお、安田好弘氏は死刑弁護を引き受け続ける、その理由は――。安田弁護士に密着したドキュメンタリー映画『死刑弁護人』が6月30日より公開される。映画の見所を齊藤監督に聞いた。●国策捜査 死刑判決が確定した光市母子殺害事件の元少年 弁護団への猛烈な批判と変更された死刑基準 青木 理●冤罪阻止の最後の砦 刑事弁護人が抱える困難 北方 農夫人死刑や無期判決が予想される重大事件ほど弁護士の労力負担は大きく、弁護費用が持ち出しになる場合も多い。安田好弘弁護士に重大事件が集中する背景には、この国の刑事司法の歪みがある。
- 大飯原発再稼働は“犯罪的”所業である小出裕章 京都大学原子炉実験所助教に聞く 聞き手・まとめ/粟野仁雄究極の「出来レース」で再稼働が決定した大飯原発3・4号機。あの大事故からたった1年3カ月でなぜそうなるのか。京都大学原子炉実験所助教の小出裕章氏に聞いた。
- 副読本『アイヌ民族:歴史と現在』書き換え事件の背景 平田 剛士北海道を中心に全国の小中学校で利用されてきた副読本『アイヌ民族:歴史と現在』を発行する政府系財団が三月、記述の一部を「修整」すると全国の自治体教育委員会に通知し、今年度分の印刷と配布を中止した。一方的に「修整」を決められた編集・執筆陣から反発の声が上がっている。
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- 光の当たらない現地公務員被災地を支える人を支える香山リカ×辛淑玉 東日本大震災後、被災地に務める公務員の心身が疲弊している。自らも被災者でありながら自分のことを後回しにして働いているにもかかわらず、感謝もされないばかりか攻撃の的になっているからだ。被災地で「心のケア」のボランティアを続ける二人が、すさんだ人々の心と生活を支える人を支えていく重要性について語る。死ぬまで頑張るのが公務員だという。でも、犠牲を強いたヤツが自ら犠牲を払うのを見たことがない-辛被災地では復興が進まずやり場のない不安や怒りがでてきて言い返せない職員を叩いてしまう-香山
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- 福島の空を見上げて11私たちが保養相談を続けるわけ 佐藤幸子福島の子どもたちをめぐる状況は、依然として厳しいのです。佐藤さんたちが力を注いでいるのが「保養」。子どもたちに困難を乗り越えるエネルギーを得てほしいと思うから。
- 浮躁中国「時代の記録者」として生きる亡命者・廖亦武 本田 善彦今はドイツに暮らす中国人作家、廖亦武。天安門事件によって大きく変えられた彼の半生を紹介する。