敗戦特集2018

誰もが何かを
忘れたがっている。

都合の悪いことは消し去りたい。そう思うことは人として自然な感情だ。しかし、だからといって記録や記憶を改竄したり隠蔽したりすることは、次世代や歴史に対する冒涜に違いない。安倍政権下、公的記録に行政が手を加えていたことが、白日のもとにさらされた。さまざまな民主主義国家の歴史を繙いても、異常な事態といえるだろう。8月15日を前にして、私たちは記録や記憶を手がかりに、戦争の歴史に向き合うことにする。たとえ拙く、ささいなものであっても、それらを共有していくことの大切さを、改めて噛みしめたい。

  • 「特攻兵」と「国体」の視点から
    「二度目の敗戦」をどう生きるのか
    鴻上尚史×白井聡

    いまの日本は、「1945年の敗戦」時に匹敵する悲惨な状況ではないのか。はたして希望はあるのか。9回出撃して生還した特攻兵を描いた鴻上尚史さんと、米国への従属構造を解き明かした白井聡さんが語り合う。

  • 韓国の絵本作家、クォン・ユンドクさんに聞く
    「慰安婦」被害者を描いた絵本『花ばぁば』が日本で出版
    玖保樹鈴

    韓国の絵本作家、クォン・ユンドクさんが日本軍「慰安婦」被害者をテーマにした『花ばぁば』を発表したのは2010年。それから8年、紆余曲折を経てようやく日本でも出版されることになった。

  • 植民地支配の責任と被害女性たちの“沈黙”を考える
    日本軍「慰安所」がもたらした台湾の「軍中楽園」
    熱田敬子

    中国大陸の厦門(アモイ)からフェリーで30分の台湾・金門島。かつては中台の砲撃の応酬がつづく最前線の基地の島だった。1969年にここに配属された青年と、「特約茶室」と呼ばれる台湾軍「慰安所」の女性たちの「恋愛」を描く台湾映画『軍中楽園』が、日本で公開中だ。日本の私たちが映画における女性の声の不在を理解するには、映画から抜け落ちた帝国日本の性の統治、植民地後の状況、台湾フェミニズム運動の構造などを見なければならない。

  • 作家 早乙女勝元さんインタビュー
    「伝わりにくい時代」に戦争と敗戦をどう語り継ぐのか

    10代から書き出し、東京大空襲・戦禍の継承と研究に力を注いできた早乙女勝元さん。戦争体験者がいなくなり、偏狭な愛国主義を煽る政権下で、新たな「戦前」を食い止めるために、何をどう伝えられるのか。継承の現状とこれからを聞いた。

  • マライ・メントラインさんに聞く
    ドイツ人はいま、戦争責任・戦後責任とどう向きあっているのか
    境分万純

    戦争責任・戦後責任の取り方において、ドイツは日本にとって「手本」のような国だ。しかし近年、右派台頭のように懸念される動きもある。知日家のマライさんが解説する、現代ドイツ人の「過去の克服」とは。

  • 『唱歌の社会史 なつかしさとあやうさと』共著者・中西光雄さんと考える
    「唱歌」と「戦争」その知られざる関係とは?

    唱歌――学校教育用として1881年に発行された『小学唱歌集初編』以来、さまざまな歌が、私たちの中に今も息づく。しかし、そこには戦争、そして敗戦との逸話も数多いのをご存知だろうか。『唱歌の社会史 なつかしさとあやうさと』(メディアイランド)の著者の一人に、そのフシギを聞いた。

  • 金子兜太と戦後俳句
    日本社会の戦後史と深く熱く血を通わせた
    神野紗希

    俳人、金子兜太の残したものはなにか。その格闘の軌跡と、創作の根本姿勢に迫る。

  • 国が不問にしてきた蛮行の責任を問う
    何を語る、731部隊の留守名簿
    伊豆百合子

    「731部隊員らの実名開示」というニュースが今年4月に流れた。国立公文書館が3607人分にあたる留守名簿を開示したのだ。現在、家族らが閲覧を希望し、11月末まで予定が一杯という。

  • 米NSAと「情報本部電波部」
    表に出た防衛省の盗聴部隊 成澤宗男
  • 城西大学"乗っ取り事件"(上)
    「元文科官僚に大学を奪われた」――前理事長・水田宗子さん 片岡伸行
  • 連載 不謹慎な旅 3 原爆死没者慰霊碑とニ号研究
    「過ち」の主語を探して 写真・文 木村 聡
  • 被差別部落で人権のまちづくり見守り41年
    巨大母子像「解放へのオガリ」が大阪から沖縄へ 平野次郎
  • 大統領選で改革派オブラドール氏が歴史的勝利 
    メキシコ 伊高浩昭
  • 遠のいた奄美・琉球の世界自然遺産登録
  • オスプレイがノグチゲラの営巣木上空を旋回 写真・文 山城博明
  • 返還地を推薦地に追加しただけでは基準に合致しない 花輪伸一
  • 冷麺が日朝関係を繋ぐ 神戸で"元祖"を食す 北岡 裕
  • 死刑囚からの手紙 それでも、彼を殺しますか(下)
    群馬県前橋市高齢者殺傷事件 土屋和也氏の場合 河内千鶴
  • 「香害」最前線
    米国では成人の13%が過敏症 岡田幹治
  • 映画『その日、その海』東京で上映会
    セウォル号の事故原因に迫る 成川 彩

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