シリーズ国葬への疑義・第4回
憲法学者が点検する
岸田政権による
違憲儀式の政治利用
「誰の死をも政治利用してはならない」――シリーズ「国葬への疑義」第4回にあたる今週号では、気鋭の憲法学者2人に、憲法上の疑義から考えうることを考察してもらった。そもそも「弔意の強制」が憲法19条の「思想・良心の自由の保障」に反することや、国葬の強行が何ら法的根拠をもたないことは、憲法研究者ならずとも多くの市民が共有する「常識」になりつつあり、国葬問題は新たな段階に突入している。
それは戦後、私たちの社会が曲がりなりにも築いてきた法治主義や「個人の尊重」といった憲法的価値の対極にある「人の死の政治利用」への告発の動きだ。
これは今まさに焦点の統一教会と政治家の問題とも直結し、さまざまな虚偽と不法・違法を重ねてきた故・安倍晋三元首相の政治手法やその内実への評価とあいまって、安倍氏の国葬が統一教会問題の徹底解明を妨げる疑惑隠しにもつながるのではないか――との懸念となって表出し、岸田政権の支持率も急落している。
学者や市民による提訴を含めたさまざまな批判が噴出する中で、今週、新たな動きが加わった。戦後の司法反動の激動期に最高裁の人事権濫用と闘い、民主化を求めた司法修習生代表の資格剥奪を撤回させた弁護士や元裁判官のグループ(「23期・弁護士ネットワーク」)が、新たな視点から声明を発表したのだ(きんようアンテナ欄参照)。「国葬」の名で国費を支出するならば、「国会の議決に基づくことを必要とする」などの憲法上の財政民主主義に反することも訴えている。(本田雅和・編集部)
- 法整備や国民的合意を省略
法の支配を無視 既成事実化しても違憲岸田文雄政権が強行しようとする安倍晋三元首相の国葬は、憲法に照らしてどこに問題があるのか。憲法学者の小林節氏が六つのポイントを挙げ、解説する。
- 必要なのは真相究明で、それを塞ぐ《まつりごと》ではない
憲法とも民主主義とも相いれないシンボルの政治「各種の真相究明が先で、実績を一方的に称賛する儀式を行なうことは、民主主義の理路とは相いれない」と指摘する憲法学者の志田陽子氏。国葬による負の影響や「囚われの聴衆」にされることを懸念する。
- 新聞とテレビはなぜ「Tansa」のクレジットを入れないのか
ジャーナリズムの芽を摘む大マスコミ - 「日中共同声明」から50年「不戦」を踏みにじるのか
このままでは日本は対中国戦「最前線」になる - 『いまはむかし 父・ジャワ・幻のフィルム』伊勢真一監督インタビュー
国策映画を創った父を通し、戦争を見つめる - 日本劇作家協会会長 瀬戸山美咲さんに聞く
演劇人の権利を守るためにハラスメントやコロナ禍と闘う - おうちが見つからない!
~特別永住者という隣人たちの苦悩~ - きんようアンテナ
埼玉県小学校教員、残業代請求訴訟は二審も原告請求棄却
ホームヘルパー国賠訴訟、原告意見陳述後に即結審
学者・作家らが「国葬中止」を求めネット署名開
反骨ベテラン弁護士らが「国葬反対」で声明発表
交通犯罪遺族、民事裁判での二次被害で意見書提出
「FMオホーツク」閉局、地域ラジオの意義と課題 - メディアウオッチ
「男女の性役割」見直す考古学・人類学の調査伝える欧米メディア - 日本の民俗信仰 祀りをたずねて(27)
岩石信仰 - パレスチナ
貧困状態で若い父親たちの自殺が増加
昨年の傷が癒えぬまま再びガザ戦争 - イスラエルとトルコの外交関係正常化
ウクライナ侵攻後の中東諸国の勢力再編 - 第4期 金曜ジャーナリズム塾 第1講
原田浩司 カメラマン、「共同通信社」編集委員
世間に伝えるべき結果を得るにはリスクを取ることが必要な場合も