安倍政治の「負」を直視する
ここがおかしい
『安倍晋三 回顧録』
生前の安倍晋三元首相へのインタビュー内容をまとめた『安倍晋三 回顧録』(中央公論新社刊、以下『回顧録』)がベストセラーになっている。在職中の内政、外交の動きや当時の思いが生々しく回想され、これまで明かされなかった舞台裏や人物評が満載されている。しかし、自己肯定の強さや、森友学園問題などの説明不足も目立ち、「言いっぱなし」が否めない。昨年7月、参院選の演説中、銃撃によって非業の死を遂げた安倍氏だが、だからといって、彼の言葉の表面だけ捉え、政権の取り組みを過大評価し、負の面を忘れてはならない。『回顧録』の記述を事実に照らして 多角的に検証することで、憲政史上最長の7年8カ月(第2次政権)にわたった安倍政治の実像を探る。
- 御厨貴氏の視点
ものすごい「人間不信」を見た
自らを再確認する「闘争の書」だ多くの政治家本の中でも、研究者が事実関係と照らし合わせながら聞き取りをする「オーラルヒストリー」という分野がある。政治学者の御厨貴・東京大学名誉教授は『時代の変わり目に立つ』『オーラル・ヒストリー』などの著書があり、その第一人者。『安倍晋三 回顧録』を「闘争の書」だと言う御厨さんが読み取ったものは。
- 武田砂鉄氏の視点
「これが事実」にされると政権が美化されてしまう『安倍晋三 回顧録』を読み手はどう受け止めたらいいのか。本誌書評委員でライターの武田砂鉄氏が分析した。
- 三木由希子氏の視点
他人事、自己正当化……でも裏付け公的記録なし安倍長期政権の中で、森友学園問題などさまざまな政治問題が浮上した。これらに安倍氏はどう答えているか。公的機関の情報公開問題に取り組む三木由希子氏が分析した。
- 政治課題別分析・日ロ交渉
安倍氏の認識の多くは現実からかけ離れている『安倍晋三 回顧録』には、ロシアのプーチン大統領の名前が79回登場する(質問者の言及や目次などを含む)。トランプ米大統領の218回は別格としても、それに次ぐ回数だ。このことは、安倍氏がプーチン大統領との平和条約交渉にどれだけ力を入れていたかを物語る。だが、安倍氏が本書で語っている認識の多くは、現実からかけ離れていると言わざるを得ない。
- 政治課題別分析・アベノミクス
「政策を変えるには人を替える」
政治任命化した日銀総裁人事2012年に再登板した安倍首相が打ち出したアベノミクス。『回顧録』で安倍氏はアベノミクスの結果、「雇用の創出には成功した」と自負している。だが、政治と日本銀行との関係で課題を残したという指摘がある。
- 政治課題別分析・一斉休校/加計学園問題
大学設置認可制度の私物化
子どもらを犠牲にした人災『安倍晋三 回顧録』では、新型コロナウイルス感染症対策の一環としてとった「全国一斉休校」について「評価が高かったです」と自賛。一方、安倍氏による便宜供与が疑われた加計学園の獣医学部新設問題では「私が全く関与していないことは明白でしょう。文科省の文書もいい加減だった」。はたしてそうなのか。教育行政の専門家であり、加計学園問題にも詳しい筆者に検証してもらった。
- 赤木さんに言及せず
書かれないことからも安倍政治の姿が見える『安倍晋三 回顧録』は全部で約470ページにわたる。だが、長期政権での出来事で書かれていないこともある。聞き手があえて触れなかったり、安倍氏自身が言及を避けたりした部分だ。「書かれなかった」ことに焦点を当ててみると、安倍氏という人物や安倍政治の姿が表れている。
- きんようアンテナ
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【食】
コルテバのゲノム編集トウモロコシ
日本で流通へ
新・買ってはいけない(358)
毎年のお願いですが制汗剤はかなり危ない- きんようぶんか
【本】
『学知の帝国主義
琉球人遺骨問題から考える近代日本のアジア認識』
『母は死ねない』
『塀の中のおばあさん 女性刑務所、刑罰とケアの狭間で』
【映画】『私、オルガ・ヘプナロヴァー』
【音楽】『ソングス・オブ・バカラック&コステロ』
【映画】『銀河鉄道の父』
【TVドキュメンタリー】
【TV批評】
【本箱】