2025年を展望する

時代の転換は案外突然やってくるのかもしれない。米大統領選では劣勢と思われたドナルド・トランプ氏が圧勝した。欧州でもトランプ氏と同じように移民排斥・自国中心主義を主張する政党が躍進した。2025年は第2次世界大戦が終結して80年の節目に当たる。この間に培われた自由と平等を基調とした世界観は崩れつつあるようにも思える。今後は否が応でもトランプ氏の言動に世界は振り回されていくだろう。ウクライナやガザでの戦争の行方も不透明なままだ。では日本はどうか。衆院選での自公過半数割れはあたらしい政治体制を生むのか、それともさらに混沌となるのか。経済を見るとアベノミクスの遺産である低金利、円安誘導からの脱却ができるのか。そして敗戦から80年たっても解決されない戦後処理問題をどう清算するのか。特集ではこの時代の転換点に立って過去を見つめつつ、未来を見据えたい。

  • 【凱風快晴ときどき曇り・特別編】
    民主主義の成熟度
    内田樹

    説明文

  • 【国際情勢】
    四つの危機で最も不安定な局面に
    先川信一郎

    2025年の国際情勢は地政学的な緊張と不確実性が交錯し、冷戦終結以来、最も不安定な局面を迎える。ウクライナ戦争と中東紛争、米中対立、朝鮮半島情勢の四つの危機は、第3次世界大戦にエスカレートする危うさをはらむ。ウクライナ戦争は、トランプ次期米大統領とロシアのプーチン大統領が「力による平和」を押し進めるかが焦点となる。中東はシリアのアサド政権の崩壊で、イスラエルが強硬姿勢を続けるのではないか。東アジアは中国が台湾統一を見据え、影響力を拡大させるだろう。北朝鮮とロシアの接近も脅威だ。米欧日と中ロ朝・イランの対立構造に加え、グローバルサウスの台頭で国際秩序が変容し、多極化が進むとみられる。

  • 【経済】
    トランプと国内インフレが金融政策を振り回す
    後藤逸郎

    日銀が昨年末の金融政策決定会合で追加利上げを見送ったため、さらなる「円安」の懸念が強まった。2025年の日本経済は1月に就任するトランプ米大統領の一挙手一投足に振り回され、急激な為替変動リスクを抱えながら不安定な動きとなる。ならびに長引く国内インフレが金融政策を振り回すだろう。

  • 【環境〈原発・エネルギー〉】
    際立つ原発回帰の姿勢と偽りの「気候変動対策」
    満田夏花

    2025年はエネルギーに関する国の中長期的な方針を定める「エネルギー基本計画」の見直しが大詰めを迎えており、3月までには最終版が公開されるとみられる。並行して議論されている温室効果ガス削減目標も同時期に発表されそうだ。エネルギー基本計画原案は原発回帰、電力需要の過剰な想定、火力維持、消極的な省エネ目標など問題が多く、すでに複数の環境NGO、市民団体から多くの批判の声があがっている。一方で温室効果ガス削減目標については、環境省・経済産業省の合同検討会で35年度に13年度比60%減とする政府案が示された。環境NGOや再エネ新電力の委員から「目標が低すぎる」との強い意見が相次いだが、政府案のまま決着した。

  • 【文化〈生成AIと音楽〉】
    脱身体化の流れ加速するか
    松村洋

    さまざまな質問に答えてくれる対話型のチャットGPTに代表される生成AI(人工知能)。絵画のほか、音楽分野にも浸透し、米国では著作権侵害として訴訟に発展する例も出てきた。今年も議論の的になりそうな「生成AIと音楽」について音楽評論家の松村洋さんが現状と論点を紹介する。

  • ◆日本と世界の主なスケジュール
    先川信一郎
  • 文化〈生成AIと音楽〉
    脱身体化の流れ 加速するか 松村 洋
  • 韓国・尹大統領への訴追始まる
    若者を巻き込む弾劾デモ
    支える国際市民連帯の意味
    李泳采
  • イスラエル軍関係者の「宿泊拒否」をめぐって
    解雇された元支配人が、ホテル運営会社を提訴
    「私は、自分の知識を無視したり、
    責任を放棄したりはできない」
    文/中村一成 写真/中山和弘
  • 『侍タイムスリッパー』
    安田淳一監督が斬る日本の農政 聞き手/後藤逸郎
  • きんようアンテナ
    NHK「かんぽ不正」番組、経営委議事録を公表で和解 臺 宏士
    防衛省が辺野古工事で奄美の土砂調達、市民ら反対署名 平野次郎
    【提携連載企画】
    保身の代償~長崎高2いじめ自殺と大人たち 第1部 共同通信編34
    長崎新聞社から共同通信社への「見解文書」入手1
    「私怨」を動機とする 「悪意に満ちた本」と断定
    Tansa中川七海
    不謹慎な旅(79) 雲仙・普賢岳の火砕流災害
    「定点」から
    写真・文/木村 聡
    青木理の温泉という悦楽(32)
    信州・野沢温泉の「外湯巡り」

  • 連 載
    尾池和夫の見る 食べる 学ぶ 第6回
    急流の河川と出汁の文化
    軟水が生み出す 和食のうま味

    金曜ジャーナリズム塾[第6期 第3講]
    明 真南斗(琉球新報社記者)
    政府が発表する情報や表現を鵜呑みにしない
  • くらしの泉
    【医療】
    昨年の診療報酬改定で
    生活習慣病患者の医療費に大きな変化
    内藤眞弓
  • きんようぶんか
    名張事件の映画『いもうとの時間』
    阿武野勝彦プロデューサーに聞く
    ワタナベ=アキラ
    【本】
    『「帰れ」ではなく「ともに」 
    川崎「祖国へ帰れは差別」裁判とわたしたち』 中村一成
    『スクリーンのなかの障害 わかりあうことが隠すもの』 五所純子
    『未来のアラブ人 4 中東の子ども時代(1987―1992)』 長瀬 海
    【映画】『港に灯がともる』 田沢竜次
    【音楽】『ベートーヴェン・ブルース』 二本木かおり
    【美術】「そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠」 薄井崇友
    【TVドキュメンタリー】 ワタナベ=アキラz

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