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みんなで傍聴 10月~11月の原発裁判

10月26日(金)11:00
広島地裁 伊方原発運転差止仮処分決定(法廷での言い渡しなどはありません) 13時ころから記者会見・報告集会(広島弁護士会館)。 

11月1日(木)14:30
大分地裁 伊方原発運転差止請求訴訟 第12回口頭弁論期日 原告準備書面の補充、争点の確認。終了後、記者会見を兼ねた報告集会(大分弁護士会館4階会議室)。

11月14日(水)14:30
広島地裁 伊方原発運転差止請求訴訟 第13回口頭弁論期日 耐震性及び安全論に関する原告主張に対する被告の反論。終了後、記者会見・報告会(広島弁護士会館)。

11月20日(火)14:00
京都地裁 大飯原発運転差止請求訴訟 第21回口頭弁論期日 原告意見陳述、7月4日大飯原発名古屋高裁判決批判等。終了後、報告集会(京都弁護士会館地階大ホール)。

11月26日(月)15:00
鹿児島地裁 川内原発操業差止等請求訴訟 第24回口頭弁論期日 国の主張に対する反論。終了後、報告集会(鹿児島市中央公民館地下B会議室)。

11月29日(木)14:00
水戸地裁 東海第二原発運転差止め等請求訴訟 第23回口頭弁論期日 「絶対的安全性と人格権侵害の違憲性」「強震動パルスが再現できない強震動予測レシピ(SPGAモデル)の決定的欠陥」。終了後、報告集会(三井生命水戸ビル7階 茨城県弁護士会別館会議室)。

勝負に勝って試合に負けた伊方原発の広島高裁決定

 9月25日、広島高裁は昨年12月13日の伊方原発の運転差止めを認めた広島高裁決定に対する四国電力の異議を認め、決定を取り消した。
 勝負に勝って試合に負けた、とでもいおうか、異議審決定は、火山問題について事業者の主張の多くを排斥し、原子力規制庁が裁判対策として今年3月7日付で発表した巨大噴火に関する基本的考え方を否定して火山ガイドが不合理であることを認めながら、社会通念という曖昧不明確な基準を持ち出して、結論として伊方原発の再稼働を認めた。
 そもそも、原発は本来危険だからこそ許可制が採用されているはずで、新規制基準は稼働のための最低限の要求だったはずである。ガイドは不合理であるが稼働は認める、という論理は、素人的に考えても到底納得できるものではないであろう。
 異議審決定は、甚大な被害を起こすが発生頻度の低い、いわゆる破局的噴火のリスクについては、他にこれに対する規制が存在しないことなどを根拠としてこれを無視するのが社会通念であるとしている。しかし、火山の専門家の間では、以前からこのようなリスクに備えるべきことが指摘されており、これを怠ってきたのは行政である。この決定は、行政の怠慢を国民に責任転嫁するものである。
 また、異議審は、原発の安全性は「社会通念を基準として判断せざるを得ない」というが、原子力基本法は、原発の安全について「確立された国際的な基準を踏まえ」るとしており、社会通念ではなく国際的な基準を踏まえることを要求している。明らかな法解釈上の誤りである。
 なぜ国際的な基準を踏まえることとされているのかといえば、それは、原発事故被害が我が国の国境すら超えて他国に及び得る広範囲性を有するからである。百歩譲って、破局的噴火は無視してよいという社会通念が存在するとしても、そのような国際基準は存在しない以上、社会通念に基づいて原発を稼働することは、明文に反して法的には許されない。
 冒頭で述べたように、本決定は、勝負に勝って試合に負けたとでもいうべき決定である。論理では住民側を勝たせながら、結論として稼働を認めることが許されるのか、司法の在り方そのものが問われている。(弁護士・中野宏典)

大飯差止め認めた樋口氏、「独立の気概が一番必要」

 福井地裁(樋口英明裁判長)は2014年5月21日に大飯原発3、4号機の運転差止判決を下した。7月に名古屋高裁金沢支部(内藤正之裁判長)はこれを取り消し請求を棄却した。
 しかしその内容は、司法の判断を放棄した、まるで空疎なものであった。樋口元裁判官が自らの判断と、控訴審判決について書かれた論考が明快である(樋口英明「原発訴訟と裁判官の責任」『世界』2018年10月号)。ここで樋口元裁判官は「裁判官に一番必要なのは、独立の気概だと思っている。外からは謙虚さと真反対で独善的で傲慢に見え、反発や誤解を受けることもある。でも時としてそのようにふるまうことが何よりも大事である」と述べている。
 大飯原発をめぐっては、大阪、京都、大津各地裁において訴訟が係属しているほか、上述の控訴審で島崎邦彦元原子力規制委員会委員長代理が大飯原発の基準地震動は過小評価であり、許可すべきではないとの証言に基づき、大阪地裁(北川清裁判長)に運転差止仮処分が係属している。10月16日に審尋期日を終え、裁判所の判断を待つばかりになった。裁判所においては、福島原発事故のような事故は二度と起こしてはならないという極めて普通の認識のもと、職責を果たしていただきたい。