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ジェンダー情報

シンポジウム
アルゼンチン・軍政下の国家犯罪と闘う女性たちが来日

 現在、アルゼンチンの軍事政権下(1976~83年)で行なわれた性暴力を、人道に対する犯罪として訴追する裁判が始まっているという。そのほか政権による拉致・拷問・強制失踪などの人権侵害を明らかにし記録に残す作業も進められている。国家による犯罪と闘うアルゼンチンの女性たちが来日し、シンポジウム「正義を求める闘いとその記録」が10月13日、東京・上智大学で行なわれた。

 登壇したのは、失踪した市民活動家の息子を探し続け、失踪者を捜す運動「5月広場の母たち」を共同創設したノラ・コルティーニャスさん、元大統領派として活動していたため連行され非人道的扱いを受けたグラシエラ・ガルシア・ロメロさん、恐怖政治の実態を残すための市民による人権アーカイブズ「メモリア・アビエルタ」代表のベロニカ・トラスさん。

 注目されたのは、拘禁施設から生還したロメロさん。1976年10月に通りで拉致され、秘密拘禁施設エスマ(海軍技術学校)に連行された。78年12月に解放されたが82年まで当局に監視されていたという。施設では拷問で動かなくなった人たちにつまずきながら歩いたこと、冷たいパンとマテ茶だけの食事と用を足すバケツを渡されたこと、入浴が許されるようになるとそれを男たちに見られたり、身体を触られたりしたこと、エスマのトップだった海軍少佐に目隠し手錠足枷で複数回アパートに連れ出されレイプされたことなど非人道的な扱いについて証言。いまも世界で続く性暴力被害者に共感を込めて「性暴力は破壊の戦略。被害者は肉体的にも精神的にも克服することが難しい。羞恥心を抱く。でも羞恥心はレイプする人間こそが持つべき。私たちは悪いことをしたのではなく、されたのだと考えを変えた」などと語った。

 コルティーニャスさんは1977年に息子が失踪し、探すうちに「これは個人的なことではない」と気付いて社会的な運動に発展させた活動家。「失踪はまだ続いているし失踪者は帰ってきていない。処罰されていない政治家がいる。私は復讐は望んでいないが、正義を求めている」と話した。

 トラスさんは「葬り去られる過去は再び繰り返される」という姿勢から、「真実を知る権利は、被害者だけでなく一般の人々の権利でもある。忘却と沈黙を相手に人権団体は闘っている」と述べ、「私たちの組織が管理する記録は2007年にアルゼンチン政府の支援でユネスコの世界記憶遺産に登録されている。日本のwam(女たちの戦争と平和資料館)の目指すものと同じだが、こちらは日本政府の抵抗にあっている。それは政府が沈黙させたいことを明らかにするからだ」などと日本政府の姿勢にも言及した。

 日本軍の「慰安婦」とされた被害者たちの記憶を残すwam館長の渡辺美奈さんは「被害者の声を聞かず国家間の和解で終わりにしようとする姿勢に暗澹たる気持ちになったときに心に響いたのがアルゼンチンの女性たちのスローガン〈私は忘れない、私は許さない、私は和解しない〉だった。粘り強い母たちの活動、生還した女性の勇気ある告発がなければ訴追はできなかった」と称え、「和解を目的とするのではなく、いつどこで誰が判断をして人権侵害がなされたのか。責任のありかを明らかにして不処罰の連鎖を断ち切ること。出来事を伝え続けることこそ未来を拓く」と挨拶。コルティーニャスさんが「日本の政府に伝えてほしいことがある。アルゼンチンで失踪した日本の若者について日本から情報を提供してほしい。人道に反する犯罪があったことを認識して政府は国民の声を聞かないといけない。この会場にいる人たちは私たちの話を忘れないでほしい」としめくくった。

宮本有紀・編集部

◆11月8日(木)17:30~19:30
▼セクハラ法整備を考える11・8院内集会
▼場所:衆議院第一議員会館地下1階大会議室
▼登壇:内藤忍(労働政策研究・研修機構副主任研究員)、井上久美枝(連合総合男女・雇用平等局長)、圷由美子(弁護士)、三浦まり(上智大学教授)
▼事前申込:不要
▼参加費:無料
▼主催:メディアで働く女性ネットワーク
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