週刊金曜日 編集後記

974号

▼AKB48のシングル「恋するフォーチュンクッキー」は多くの会社や自治体がダンスの動画をUPして話題を呼びました。ちなみに、サマンサタバサグループSTAFF ver.で公開されたとき、私も社長の北村に「『週刊金曜日』も編集委員や筆者の方々に踊っていただきましょう!! AKB[非公式]で」などと提案したものの即却下……。あれよあれよと増殖していく動画をうらやましく思い、年末の紅白歌合戦を見つめていましたが、推しメン・大島優子チャンの卒業が待っていました。
 AKBといい、モーニング娘。といい、初期メンがいなくなるとグループの“奥行き”がなくなると感じるのは私だけでしょうか(優子は二期メンバーですが)。
 とりあえず、秋元康氏が特別編集長となった『AERA』1月13日号が話題をさらに集めたことは間違いないです。うぅ、弊誌も負けていられません! 遅くなりましたが、本年も何卒よろしくお願い申し上げます。(赤岩友香)

▼仲井眞弘多沖縄県知事は昨年末の12月27日、米軍普天間飛行場の辺野古移設に向けた政府の公有水面埋め立て申請を承認した。
 地元に暮らす20?30代に話を聞くと、「それって驚くべきこと? 知事が反対を貫いたらが驚くさ」、「最初はOKしていた人でしょう。元に戻れて良かったさ(笑)」などと、皮肉交じりの声があがる。
 とはいえ、こうした感覚を「諦め」や「シラケ」の類とみなすと、現地の文脈を誤読することにつながりかねない。右記の見解がある一方で、「オスプレイ、時間帯も経路もルール無視。子どもが騒音で泣きじゃくるのを見ると本当に許せない」、「ナイチャー(内地人)は、地政学的にどうのこうの、ハンコで押したようなことしか言えない」、「本土、海外の基地の街の人たちと交流を深めたい」、「反対集会に行くつもりはないが騒動なら参加する」、といった声もある。
 怒り狂うことなく、牙を研ぐ人間の姿がそこにある。(内原英聡)

▼ここ数年、妹に会っていない。おそらく、一昨年の夏にマレーシアで会ったのが最後だ。
 妹が世界一周を始めて、早一年半の季節が経つ。私が六年暮らした韓国から帰ってきても、いまだどこか日本の生活に張り合いがないのは、家に妹の罵声が響かないからだろうか。会えば喧嘩もするが、連絡は毎日取る。そんな仲だ。
 昨年末に、エクアドルで新婚の日本人夫妻が死傷した事件をはじめ、海外で何か事件や事故が起こると、気が気じゃない。「靖国神社は何が問題なの」と、びっくり仰天な質問をしてくる無邪気な妹だが、ざっくばらんな性格のせいか現地人にすぐとけ込み、本人はのほほんと暮らしているようだ。
 待つ身としては、冷や冷やなのに。姉の心、妹知らずだ。ふと思えば、私が韓国で暮らす間、親に同じ心配をかけたかもしれない。孝行せねば。ともあれ、来月帰国する妹の無事を祈り、今日も生存確認の連絡を取る。(渡部睦美)

▼年末も残すところ数日となったある晩。風邪をこじらせたカミさんを寝室に休ませ、居間のソファーでひとり横になっていた。夜中、顔を覗き込まれる気配で目を覚ます。そのまま寝たふりを決め込んでいると、頭を撫でられ、落ちかけた毛布を掛け直してくれる。しばし温かい眼差しを間近に感じ、こらえ切れずに笑い出すと、立ち去る気配が廊下に消えた。
 翌朝、感謝の気持ちをカミさんに伝えると、彼女は「……?」。ふたり暮らしの団地住まい、咳がひどくて部屋から出ていない。「そんなバカな」と笑っていたが、最後は互いに青ざめた。心当たりが無いでもない。喪中ハガキで恩人の訃報に接し、遺族に心ばかりのお線香を送った直後のことだった。しかし、それなら嬉しい、また会いたい。
 以降、同じソファーで眠りについている。ただ静かな夜が続くだけ。あれは私の願望だったのか。初夢はまだ見ていない。 (町田明穂)