週刊金曜日 編集後記

975号

▼取材中に相手の携帯がなったので「どうぞ」と合図をおくったところ、会話に聞き入ってしまった。
 「あれが1879と重なってみえるわけさ。松田道之と重なるわけ。普天間の辺野古移設をスムーズに進めたいのはわかるけれども、それとは逆のことがおきるよ。沖縄の人間は目を覚まして、顔を上げるさ。中央の政府はどうしてそのことがわからんかね」
 沖縄の名護市で、自民党の関係者を取材していたときのことだ。イチハチナナキュウという語音は、このとき初めて聞いた。
 昨年、沖縄選出の自民党国会議員5人が幹事長の横で首をうなだれたとき、地元には衝撃が走ったという。「県外移設」という選挙公約が頭ごなしにつぶされた。
 明治政府が琉球王国を終わらせ沖縄県を設置したのが1879年(琉球処分)。そのとき政府から派遣された処分官が松田道之だ。
 私に言った言葉ではない。でも、もしかすると私にも言っていたのかもしれないと、東京に戻ってから思うようになった。(野中大樹)

▼今号から、マンガ家・芳賀由香さんによるコミックエッセイ「郡山もんもんライフ」が始まります。タイトルでおわかりのとおり、芳賀さんは福島県郡山市在住です。
 震災&原発事故から、間もなく3年が経とうとしています。福島関連の報道がどんどんなくなる中、福島に住む方の思いを知りたくて、ご登場をお願いしました。今月から月1回、第三週の号での連載予定です。連載では、芳賀さんの等身大の日常が描かれる予定になっておりますが、はたしてどんな展開になるかは、芳賀さんのみぞ知る(!?)。
 タイトルを決めるにあたっては、芳賀さんからは「郡山さすけね通信」でいかが? とアイデアが出たのですが(もちろん皮肉を込めた「さすけね〈大丈夫、さしつかえないの意〉」ですよ)、読者からかなり誤解を受けそうなので、芳賀さんの今の状態を表しているという言葉「もんもんライフ」に落ち着きました。ご愛読、よろしくどうぞ。(渡辺妙子)

▼新右翼とやらの仲介で5000万円の裏ガネを懐(貸金庫)に入れたペテンの男に、433万人余がまんまと騙された前回(2012年12月)の東京都知事選挙から約1年。またまた問題ありそうな男たちが、名誉と利権にあずかる再就職先を求めて立候補表明をしている。舛添に絞る。
 8段階中で最も重いという除名処分を自民党から食らい(10年4月)、政治業者として末路を辿ったはずのこの男は、かつて「原発再稼働は困難」(11年9月)などと国会で講釈を垂れながら、ここに来て再稼働推進の自民党と手を組み、1月3日には公明党へのご機嫌伺いか、創価学会の“直営店”である東京富士美術館に足を運ぶなど見え見えの組織票集票活動に余念がない。
 極右の男に長年その椅子を与えてきた都民は、わずか1年余り前の教訓すらうち忘れ、またしても口先だけの男に騙されるのか。433万人のみなさま、「一度目は悲劇、二度目は喜劇」という言葉を噛みしめましょう。(片岡伸行)

▼大手町の駅構内で見かけた某大手新聞社の広告のキャッチコピー、「総理大臣に一目おかれる国民になりたい。朝○新聞」。なかなかのセンス。私なら、なりたいの後に(笑)を付けるが……。ウチの新聞を読んで、安倍さんに評価してもらえるような“立派な”人間になりなさい。そんな願いが込められているのだろうか。
 2014年、小社第一弾の単行本のタイトルは、『読んでやめる精神の薬』(小社刊)、キャッチコピーは、「危ない薬から抜け出す方法を教えます。」。
 精神の薬には、確信犯的に依存性の高い成分が入れられていて、一度投与されると、自分では、やめたくともやめられない。中断すると禁断症状が現れる。お医者さん、製薬会社丸儲けの仕組みがそこにはある。薬での完治は困難。
 ならば、この現実を多くのひとに知ってもらいたい。そして精神の病で苦しんでいる多くのひとにこの本を手に取ってもらいたい。そんな願いをこのコピーに込める。(尹史承)