977号
2014年01月31日
▼この国の近現代史、同時代史は、汚辱にまみれている。かの江華島事件に始まり、特に最初の侵略戦争であった日清の役以降、隣国への卑劣極まる手口による暴虐三昧は、「大元帥」の終戦の詔勅まで一貫していた。その間、あるいは今日まで、福沢諭吉のような朝鮮民族を「牛馬豚犬」呼ばわりした差別主義者や、徳富蘇峰の如き戦火の扇動者を嚆矢として、似たような論者、売文業者は絶えない。昨年来、A級戦犯容疑者の孫による過去の遺物にして、火付強盗に等しい悪業の居直りを売り物にする神社の参拝に拍手喝采する連中のかまびすしさはどうだ。加えて、昔日の暴清膺懲が暴支膺懲を経て、暴中膺懲として甦ったのかと見紛うばかりの憎悪が焚きつけられる世相ではないか。自国にいかほどの危害も加えはしなかった隣国をかくも執拗に侮蔑し、傷に塩を塗り続ける民が他にいたら教えてほしい。戦後の憲法前文も日中共同声明も、卑劣驕慢という宿痾の前に死文と化したのか。(成澤宗男)
▼退職の挨拶です。単行本の担当として入社したのが2009年。当時の社長・佐高編集委員から辞令をいただきました。
本多編集委員の『貧困なる精神』は、「V集」「24集」「25集」に関わりました。本多さんの原稿は、過去に書いた記事のコピーをB4の紙に貼り付けて通し番号を振り、そこに訂正などの指示を書き込んだ分厚い紙の束でした。文字サイズ、画像の置き方、分量や構成の調整に試行錯誤したものです。
読者の方とは、前回の都知事選で宇都宮候補(編集委員)の選対事務所や原発反対の集会、トークイベント、経産省前テントひろばなどの場で出会い、交流することができました。昨年、福島県南相馬市に呼んでくれ、市内全域を案内してくれたのは、創刊時からの定期購読者の岡田さんでした。
「スポンサーとしての読者」の皆様に心よりお礼を申し上げます。これからは自分もその一人となるので、同じ読者として、どこかでお会いできる機会をとても楽しみにしています。(白井基夫)
▼「坂本龍一さんと対談してみたいですねー」
約1年半前のある秋の昼下がり、東京某所で鈴木邦男さんに言われた一言。「絶対に面白い対談になる!!」。坂本龍一さんがお引き受けされるかもわからない段階で、私の妄想はどんどん広がっていきました。
昨年、お二人は2回にわたり対談。本誌に掲載したのは、ほんの一部です。この度、大幅加筆の上、『愛国者の憂鬱』と題して、上梓しました。
本のデザインは長嶋りかこさんという気鋭の若手デザイナーの方。既存の本にとらわれない斬新なデザインです。ぜひお手に取って、ご覧ください!
ふと書店を見渡せば、『日本人は中韓との「絶交の覚悟」を持ちなさい』『呆韓論』など、対立を煽る本ばかり。しかも売れているのです……。日本社会を映しているかのよう。そんな中、『愛国者の憂鬱』が多くの方々に読んでもらえることを願っています。 (赤岩友香)
▼年末に、寝台特急「サンライズ出雲」に乗った。チケットを取るところから私にとっては一大イベントだった。
飛行機より何倍も時間がかかったが、あっという間に感じられた。ゆれるとか狭いとか聞いていたが、私にとっては快適な旅だった。車窓を楽しむ余裕などほとんどなく、おとなしく乗るための幼児向けシールブックのシールを延々窓ガラスにはる子と、ただマンガを読みふける子と一緒では、トイレに行くのもままならず、車内探検にも行けなかったが楽しかった。鉄道だからというだけではなく、個室だったからだとは思う。
でも「サンライズ瀬戸」との切り離しのある貴重な岡山駅での停車時も寝てしまっていたし、車掌さんからオリジナルタオルを買うのを忘れたのも心残り。
是非もう一度乗りたいが、まずチケット入手の手間へかけるエネルギーを蓄えたい。まあ時期を選べば、今回ほどの苦労はないだろう、と思いたい。(佐藤恵)