979号
2014年02月14日
▼脱原発とともに、東京都知事選で私が注目したもう一つの「隠れた争点」は「国家戦略特区」だ。
今回の都知事選立候補者では、舛添要一氏と細川護煕氏が「特区」の活用をうたい、宇都宮健児氏が明確に反対した。
国家戦略特区諮問会議の2回目が開かれたのは、選挙戦真っ只中の1月30日。実は、都知事選の結果が、特区構想の行方に大きな影響を与えるのだ。諮問会議では、近々特区の区域を選定する予定だが、筆頭が東京都と目されており、特区ごとに設置される区域会議で、都の責任者が都知事。舛添圧勝を受けて、特区大推進は間違いない。
安倍政権が成長戦略の「第三の矢」の柱と位置づける国家戦略特区。本号で東海林智氏が指摘するように、特区は、単に治外法権的な役割だけでなく、私たちを守っている法律を「岩盤規制」と名付けることで、これを攻撃対象とするためにも使われている。都政に、国政にこれから何が起こるのか。「スピード感」に圧倒されないようにするしかない。(山村清二)
▼『読んでやめる精神の薬』(浜六郎著、小社刊)に、発達障害等の子どもへの薬剤の使用について、慎重であってほしいとある。
昨年12月14日『ニューヨーク・タイムズ』で、アラン・シュワーツ記者が「注意欠陥障害を売る」と題して、製薬会社が注意欠陥・多動性障害(ADHD)の薬を売るために、何をしてきたかを紹介し、直後から論争が起こった。
現在、全米の高校生の15%がADHDと診断され、350万人の子どもたちが薬剤を投与されている。1990年には60万人だった。
50年以上にわたって、ADHDを正当化するため闘ってきた、キース・コナーズデューク大学名誉教授は国家的大惨事と指摘する。彼は、これをエピデミックと言う。
背景には従来の「古典的」なADHDのイメージを一般的な現象にまで広げた製薬会社のマーケティングがあるとし、具体例が報告されている。向精神薬の利益は、10年前17億ドル、一昨年は90億ドルである。この巨大な波が日本に押し寄せるのか。(樋口惠)
▼年明け早々、横断歩道を自転車で渡ろうと走りだした途端、突然車の後ろから飛び出してきた若者の自転車とぶつかってしまった。幸い双方に怪我はなかったとはいうものの、もしどちらかが大怪我をしていたとしたら、と思うと今でもゾッとする。先月末、自転車事故訴訟で4700万円の損害賠償命令の判決が東京地裁で出されたが、自分もいつ加害者になるかもしれないと思うととても他人事とは思えなかった。でもこんな多額の賠償金、個人が支払うことは可能なのだろうか?
民事訴訟の判決はその後いったい誰が監視してくれているのだろう。ネットで検索してみたところ、賠償金が支払われない場合、財産の強制執行申し立てが相当数あり、中には財産開示の命令が出されても「資産はない」といえばそれっきりになる例もあるという。民事訴訟に国の強制力はなく、監視するのは私たち一般人だともあった。これでは何のための裁判なのか疑問だ!(柳百合子)
▼その日、衝撃の事実を知った。それは朝のNHKニュースで何の前触れもなく始まった。作曲家佐村河内守氏の楽曲の構成は本人だが、作曲したのは別人であると代理人弁護士から連絡があったと淡々と報じた。NHKは佐村河内氏の特番を組み、その後もしばしば取り上げていただけに、問い合わせが殺到したに違いない。NHKが彼の売り出しに一役買ったのは紛れもない事実だ。報道姿勢が甘かったと言えるし他のメディアも追随したので同罪である。かくいう私も本欄で彼を紹介した。不明を恥じてお詫び申し上げます。
時は水曜日。事が発覚する前に先手を打ったとすると、木曜発売の週刊誌のスクープかと思ったが、やはり『文春』であった。翌日本当の作曲者が謝罪会見を行なった。最初から共作を申し出ていればこんな騒ぎにならなかった。これではまるで操り人形ではないか。ちなみに佐村河内氏の出世作は「鬼武者」というゲーム音楽だったが、鬼武者に影武者がいたのでは洒落にもならないのだ。(原口広矢)