981号
2014年02月28日
▼江戸時代、お上に対する抗議として頻繁に行なわれた一揆には特有の音がともなっていた。一味神水(庶民が結束を固める)の儀式の際は、鈴、鰐口、鉦、鏡など金属器を打ち鳴らす。出動時は鐘や半鐘が鳴り響き、ほら貝の合図とともに、ときの声を上げたという。
もうひとつ、一揆には「祭りと同根」という特色があった。ムラ祭りは人びとに休息をもたらすだけでなく、反逆や防災のための人脈を構築し、集い、出動するための「場」を温存した(田中優子『カムイ伝講義』参照)。「反逆の音」は祭りとともに日本の伝統だった。
ところで、耳から入るものだけが“音”なのか。現場の「音」は空気を震わせ地を揺らすこともある。「全身で感じとるもの」だろう。
今回の特集は「プロテストソング」だが、政治的抗議の意思を明確に表す歌や詩ばかりが「プロテスト」とも限らない。対象をどう捉えるかは受け手の感性次第であり、そうした意味でも世界には、知られざる「プロテストソング」がまだ多く潜んでいる。(内原英聡)
▼「分断国家」の悲しみとは何なのか。やはり、一番には、そこに住む人たちの悲しみだろう。今回、プロテストソング特集に入っているアラブ・ヒップホップにしても、分断された地、パレスチナがその拠点となった。悲しみや憤りがラップとなり、人々の心を揺らした。
隣の国、韓国でもそうだ。分断された朝鮮半島の片側、北朝鮮が「歩み寄り」、3年4カ月ぶりの離散家族再会が行なわれた。これにより、1月31日号の「浮上するアジア危機」で触れた「1月末から3月初め」にかけての朝鮮半島の有事危機は薄らいだ。北朝鮮の歩み寄りの背景には、金剛山観光事業再開などへの期待が透ける。
ただ、政治的な思惑は抜きに、離散家族について考えると、今回、親子で再会を果たしたのはわずか12組にすぎなかった。これは、再会事業申請者である約13万人のうち、すでに約6万人が亡くなっていることが大きいだろう。またいつ会えるかわからない引き裂かれた家族らの悲しみを、政治的に利用してはいけない。(渡部睦美)
▼先日読んだ森達也さんと森巣博さんの『ご臨終メディア』。帯のコピーには「抗議が怖い、視聴率が欲しい。」とある。約9年前の本だが、自主規制してしまうメディアの様は今にも通じると思っていたら、本誌編集委員・佐高信の『サンデー毎日』での連載「佐高信の政経外科」が打ち切られることを聞いた(詳細は18ページ)。
『サン毎』は私の心の中の“ライバル”だった。先日、曽野綾子批判特集を企画したのも、『サン毎』がきっかけだったし、幸福の科学の里村英一専務理事と佐高の対談が掲載されたときも「やられた!」と思った。これからは本誌で「佐高信だからこそ」の企画を展開していく所存だ。
先週、ある男性の電話を受けた。「『サンデー毎日』編集部に、佐高さんの連載がどうなっているかを電話で尋ねたら『著者の都合でお休みしている』と言われた。体調を崩されているのではないかと心配になり『週刊金曜日』に電話した」とのこと。ちょっと寂しい“ライバル”の対応だ。(赤岩友香)
▼2月14日から翌日にかけての積雪の影響により、先週2月21日(980)号の定期購読のお届けが大幅に遅れてしまいました。申し訳ございません。特に長野、山梨の両県は、「ヤマト運輸」の荷受停止措置を受け、一旦搬入した本誌を引き取り、改めて2月21日(金)に「第三種郵便」で発送しています。郵便も遅延が発生しており、一部配達不能な地域がある模様です。現在もお手元に届いていない場合は、お手数ですが、ご一報いただければ幸いです。ご迷惑をおかけしたことを重ねてお詫び申し上げます。
さて、ようやくオリンピックが終わってくれました。ジャンプやフィギュア、その他の競技も、それぞれの選手を応援しましたし、自分の限界に挑戦する姿は、素直に心打たれます。ただ、メダルを期待する周囲の勝手な盛り上がりと、「感動をありがとう」の連呼には、毎度のことながら、辟易して選手も気の毒になります。宴が終わり、なぜか今、ほっとしています。(町田明穂)