週刊金曜日 編集後記

987号

▼定期購読者のみなさまに、この欄を借りて本誌の未着、延着についてお詫びいたします。
 消費税増税の駆け込み需要による宅配便の乱れで、本来の予定日に本誌をお届けできない状況が続いております。地域によっては1週間近く遅れるという事態も発生しています。到着を楽しみにしていただいている読者のみなさまに多大なご迷惑をおかけしています。本当に申し訳ありません。
 弊社はヤマトのメール便を使っております。期日指定ができないため「後回し」にされる可能性があり、「遅れないように」と再三、申し入れていますが、「お願い」の域を出られないのが実態です。
 本誌は経営悪化から経費削減の必要に迫られ4年前に郵送をメール便に切り替えました。『金曜日』存続のためにはやむなしとの判断でしたが、読者のみなさまにこれ以上のご迷惑をおかけするわけにはいきませんので、配送方法について再検討をしております。
 まことに恐縮ですが、未着の際は、弊社業務部にご一報いただければ幸いです。(発行人・北村肇)

▼その出会いは突然やってきた。赤基調の北朝鮮国旗が、艶やかに携帯電話の待ち受け画面には揺らめいていた。中を見ると、写真フォルダには何枚もの北朝鮮関連の写真が……。それを見ながら、嬉々として場所の説明や北朝鮮の人々との会話の話などをしてくれるのだ。この人は一体、何者なのだろう? 今年の仕事始めは、なんとも不可解な人物である北岡裕さんとの出会いからだった。そして北朝鮮ポップスなるものを知った。
 北岡さんが普段聴いている曲のほとんどは、北朝鮮ポップスだという。原稿のやり取りの中で、知識の豊富さに驚いた。オタクではなく、北朝鮮ポップスの「専門家」と呼ばせていただきたい。はじめは編集担当としての距離を保っていたが、お勧めの曲を聴くうちに、いつの間にか私も、“無慈悲なる北上”の仲間入りをしていた。
 私のお気に入りは、「突破せよ 最先端を」だ。ポップなメロディーなのに、それを歌うのは合唱団の美声。アンバランスで、新鮮で、斬新。等身大の北朝鮮の姿がここにはつまっている。(渡部睦美)

▼今から50年前の1964年4月5日、東京・町田市の町田駅近くの商店街に米軍機が墜落し、4人が死亡、32人が重軽傷、住宅27戸が全半壊するという大惨事があった。町田市に隣接する神奈川県は沖縄に次いで米軍基地が多く、同じ64年には5人が、77年には3人が町田市近辺で米軍機墜落によって亡くなっている。
 3月28日と4月5日には墜落から50年の集いが市内で行なわれた。米軍機の残骸は当時事故現場に埋められ、今もそのままだという。講演に立った前泊博盛さん(沖縄国際大学大学院教授)は、「米軍機の部品には放射性物質が使われている可能性があり、町田の残骸も同様。明日、また墜落があるかもしれない。事故の検証は今でも必要なこと」などと話した。
 私の両親が暮らす町田市内の家では米軍機が上空を飛ぶと、電話やテレビの音が聞こえなくなるほどだ。さらに米軍機からの部品の落下や不時着の失敗などは毎年発生しているという。市民の有志らは、犠牲者の追悼と再発防止の願いを込めて「平和の像」の建立を目指している。(吉田亮子)

▼今週号に掲載の入国管理局による強制送還中に起きたスラジュさん事件は、端的に言って殺人だった。素直に考えるならば、そう結論するよりほかにない。その意味で、足らない部分もあるにせよ、窒息死を認めた国賠訴訟の地裁判決は当然のものだった。
 3月末、東日本入管センター(牛久収容所)で2人の被収容者が亡くなった。収容所の劣悪な環境は、複数の被収容者の証言からも明らかだ。訃報に接した難民支援者が牛久入管に電話したところ、「私たちも驚いています」と言ったという。管理責任がある場所で死亡者が出たとは思えない無責任な発言だが、窒息している人を目の前にして詐病扱いできる特殊能力をもった入管職員が複数いることもスラジュさん事件で確認されている。組織に問題があるのは間違いない。
 スラジュさん事件の国賠訴訟は国側が控訴した。この組織の不始末の尻ぬぐい、自己正当化のための裁判費用は外国人を含めた納税者の税金で賄うことになるのだが、これは無駄遣いではないのだろうか。(原田成人)