989号
2014年04月25日
▼思索家の埴谷雄高は『幻視のなかの政治』(未来社)で「政治が生活の集約であり、戦争が政治の集約であるかぎり、戦争にはまた生活にあるすべてのものがある」と記している。この文言を繙くと、「戦争」の菌糸は一見「平和」と考えられる(思い込まされている)日常の生活の場にこそ潜んでいると、読むこともできる。
兵士による“ドンパチ”が市街地で繰り広げられるのは一端か末期にすぎず、ファシズムしかり、「弱者」を切り捨てる構造しかり、肉弾戦の極地に至るまでには平静を装った無数の狂気(つまり戦争)が、音を立てることなく氾濫する。
世界各地で“死体”を見つめ続ける写真家の釣崎清隆氏は、戦場より、むしろ都市部で“被写体”を見いだすことが多いと、インターネットサイト「X51」のインタビューに答えている。
特集名「僕らは『戦争』を知らない?」の疑問符には、本当に「僕ら」は戦争を知らないのか? それとも気づいていないだけなのか? まずは、そこを問いたいという思いも込めている。(内原英聡)
▼オバマ米大統領が4月23?25日の日程で来日する。米大統領としては、クリントン氏以来18年ぶりの国賓待遇。〈23日に安倍首相と非公式の夕食会、24日に首脳会談を予定しており、日米の結束を国際社会に示すことになる〉 と、『読売新聞』(19日夕刊)はヨイショするが、大統領は日本側を信用していないのではないかと、ある外務省関係者は心配する。
「オバマ氏は迎賓館に宿泊せず、都内のホテルを利用します。国賓が迎賓館に泊まらないのは異例。『産経新聞』は〈「合理性」を重視するオバマ氏が使い勝手のいいホテルを選んだ可能性もありそうだ〉 としていますが、盗聴を用心しているのが真相でしょうね」
日米関係は、昨年12月に安倍晋三首相が靖国神社に参拝してからぎすぎすしているという。信頼を取り戻すには、首相の行動が他国からどう見えているのか、分析と反省が必要だろう。約2500万円かけて「接待」し、集団的自衛権の「お土産」を渡しても便利に利用されるだけだ。(伊田浩之)
▼どんな大家にも「若く」て「未熟」だった時代はあると思うのだが、小保方さんに関してはそれがすさまじいバッシングの理由となってしまうのは、はたで見ていてまったく解せない。もしこれが、若手女性研究者ではなく若手男性研究者だったら、理研や世間はどんな反応だったのだろうかと考えてしまうのだが、みなさんはどう思われます?
それにしても、小保方さんの会見のテレビ中継や、その後もさまざまに小保方さんを攻撃するメディアなどを見ていると、マスコミの方々は、小保方さんに対するエネルギーを、薬の効果をごまかした製薬会社や、原発やら遺伝子組み換えやらを推進しようとする“科学”者に向けてほしいなあと、つくづく感じるのでした。
ところで「くらしの泉」では4月から6月、訪問看護師の秋山正子さんに、在宅ケアについてのコラムをお願いしています。秋山さんの文章を読んでいると、介護も看護もひとりではない、ということが伝わり、心強い気がします。 (渡辺妙子)
▼「追う者は強くなければ、つまらない。」モーニング娘。の最新広告コピー。弱体化するAKB48に向けた皮肉なのか励ましなのかは推測の域だが、AKBに食わせてもらっている情けない大手出版社をはじめ、各メディアにとってもドル箱のAKBは強くなくては困る存在だ。しかし強くみせるのにも限度があり、某広告代理店などはすでに次の仕掛けに奔走中。
昨年の秋まで地元福岡で活躍していたご当地アイドルのシンデレラ・ストーリーがそれ。ファンが撮影した写真が“天使すぎる”としてネットで話題になり、『an・an』の表紙やテレビ出演が続々決定、きわめつけはソフトバンクのCM出演。この一連の流れ、ほんの2、3カ月間の出来事。世間の支持がなくとも、こうやって既成事実を作りあげ、ステマよろしく、あたかも人気があるように見せかけて売りだす手法はどこかの政治と一緒。その是非はともかく、それにまんまと乗せられ、“天使”橋本環奈ちゃんにはまりそうな自分が一番情けなく悲しい。(尹史承)